「奨学金307万円」底辺高校から早大行った男の半生 違う世界を知れたのは奨学金のおかげだった

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とはいえ、それだけでは生活はできないのでアルバイトや、これまでの「9浪」という経歴を生かしてYouTubeにも精を出した。

「テレビ局の競馬中継の番組スタッフや予備校講師など、いろいろやっていました。ただ、1年生の後半で『バンカラジオ』や『トマホーク』など、さまざまな教育系YouTuberのチャンネルに出演するようになったので、それらの稼ぎで生活することはできました。家賃も2万4000円の激安のアパートを探して、今もそこに住んでいます(笑)」

奨学金は、自分にとって大事な投資だった

そして、31歳で早稲田大学を卒業。現在は株式会社カルペ・ディエムという企業で教育事業を担当している。働き始めて1年が経過したが、33歳となった今、雇用形態は正社員ではなく、業務委託だという。

大学2年、大隈重信像の前での9浪濱井さん
大学2年、大隈重信像の前での写真(本人提供)

「実は今年、東京大学の大学院を受験したんです。というのも、年々まだ僕自身のインプットが足りないと思うようになり、『このまま人に勉強を教えたり、学校で講演してもいいのだろうか?』と感じるようになったからです。

それに、教育格差の問題について本気で研究したいと思っているんです。僕は『大学に行く意味なんかない』と言われるような環境で育ち、その後もずっとバカにされながらも勉強を続けて、なんとか早稲田を卒業しましたが、そこで『生まれ育った環境によって、入ることのできる大学が制限されてしまう』ことを実感しました。

能力に応じた教育というのが、実はまだ実現できていない。そこで、東京大学の大学院に教育格差に関連する研究をされている教授が複数名いるので、その先生方のもとで目に見えない地方格差を研究して、地方で燻っている人の救いになるような活動をしたいと思うようになったんです」

奨学金、借りたら人生こうなった (扶桑社新書)
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残念ながら、今年は合格できなかったが、引き続き来年以降も受験は続けていくという。

自らが置かれた境遇から抜け出すために、大学進学という選択肢を選び、その後は9浪してでも、高いランクの大学に身を置くことを目標にしてきた濱井さん。当然ながら、奨学金を借りたことに後悔はない。

「最初は『自分をイジメていた地元の人間たちを見返したい!』と思って勉強していましたが、いざ大学に入ったことで、これまで地元や親戚たちにはなかった考え方を持つ学生たちに出会えたことは本当に良かったと思います。彼らと出会わなければ、僕の人生はもっと荒んでいたでしょう。

結局、大学に行ってないと、僕自身、高みを目指すということはなかったので、違う世界を知れたのはやはり奨学金のおかげです。だから、自分にとって大事な投資だったと、今でも思っています」

本連載「奨学金借りたら人生こうなった」では、奨学金を返済している/返済した方からの体験談をお待ちしております。お申し込みはこちらのフォームよりお願いします。奨学金を借りている/給付を受けている最中の現役の学生の方からの応募や、大学で奨学金に関する業務に関わっていた方からの取材依頼も歓迎します。
奨学金借りたら人生こうなった
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千駄木 雄大 編集者/ライター

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せんだぎ・ゆうだい / Yudai Sendagi

編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。奨学金、ジャズのほか、アルコール依存症に苦しんだ経験をもとにストロング系飲料についても執筆活動中。奨学金では識者として、「Abema Prime」に出演。編集者としては「驚異の陳列室『書肆ゲンシシャ』の奇妙なコレクション」(webムー)なども手掛ける。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)。原作に『奨学金借りたら人生こうなる!?~なぜか奨学生が集まるミナミ荘~』がある。毎月、南阿佐ヶ谷トーキングボックスにて「ライターとして食っていくための会議」を開催中。

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