「奨学金307万円」底辺高校から早大行った男の半生 違う世界を知れたのは奨学金のおかげだった

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兵庫県出身の濱井さん。進学した産業高校には普通科がなく、機械科、土木科、電気科、商業科、生活科という、卒業後はすぐに就職できるような学校を推薦入試で受けたという(ただし、定員割れしていた)。

「当時、自分が通っていた高校の偏差値を『みん高【編注:「みんなの高校」という高校情報サイトの略】』というサイトで調べたところ40程度でした。でも、当時は『恋愛がしたい!』と思って、女子が多そうな商業科に進んだんですね(笑)。

入学してみると、実際に男女比が3:1くらいだったのですが、商業科の女子というのはなんだか派手で、誰とも性格が合わずに、3年間誰ともしゃべることができませんでした」

文字通り高校デビューに失敗した濱井さんは、起死回生のために野球部に入部。しかし、そこでひどいイジメを経験することになる。

「それは『プロレスごっこ』と称した恒常的な暴力でした。グローブをドブに捨てられたり、自分の局部の写真を撮られて女子生徒にばら撒かれるとか……。それがトラウマになってしまい、2年生のときには部活を辞めてしまいます」

しかし、そこで植え付けられたトラウマが、その後の人生を左右するほど、自らを奮い立たせるきっかけとなる。

「『イジメていた人間をどうにかして見返したい!』と思うようになったんです。仮に高校卒業後、就職をしても地元が一緒だからいずれどこかで鉢合わせる可能性は十分にあり、そうすると一生コンプレックスを引きずることになる。僕自身が人間的に成長しないと、彼らに『勝った』とは思えなかったんです」

その後、ネットゲームで出会った大学生たちと交流するうちに、大学進学を志すことになった。

ただ、いわゆる「Fラン高校」だったので学校側も受験には対応しておらず、自己推薦枠で大学進学を試みることにした。「情報処理検定ビジネス情報部門」一級の資格を生かして、「資格推薦」制度を使い、3つの大学を受け、唯一受かった大阪産業大学に進学した。

家族にとって想定外だった「大学進学」

ただ、彼の「大学進学」という選択は家族にとっては想定外のものだった。

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「僕が生まれ育った兵庫県の丹波市は、大学まで進学する人が非常に少なく、2021年兵庫県の「大学基本調査」の大学等進学率では最下位だった地域なので、家族や親戚もほとんどが高卒止まり。だから、昔から『うちは大学に行けないよ』と言われながら育ったんです」

また、濱井さんの両親が大学進学を快く思わなかったのには、もうひとつ経済的な理由があった。

「うちは郵便局員の父とパート勤務の母、それと2歳下の弟と4歳下の妹の5人家族。ただ、僕が10歳のときに父親が脳出血で倒れてしまい、半身不随で要介護度が5という最高ランクになってしまったんです。

そこで、母が介護したり、ヘルパーさんを呼んだり、保健施設に入居したりと、両親ともにまともに働くことができず、世帯年収は200万円程度でした。そのこともあって、子どものときから『長男なんだから高校卒業後は家に残ってお母さんを助けてやらなあかんで』と親戚によく言われていたんです」

次ページ家族の支えもあって大学に入学するも…
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