【連載第4回:技術と国際政治】
グローバリゼーションがもたらした国家間の力関係の推移や不均衡は、新たな技術の獲得とそのイノベーションをめぐる新たな国際的な覇権争いを生み出しつつある。それは、国家主導で情報のみならず、情報を基盤とする新興技術を保護し、規制・罰則を強化する動きへと結びついている。
とりわけ情報や技術の獲得競争は、ポスト冷戦期における現状維持勢力(Status Quo Power)のアメリカと、現状変更勢力(Revisionist Power)の中国との技術覇権(テクノ・ヘゲモニー)をめぐる新たな大国間競争という、アメリカの国際政治学者A・ F・ K・オルガンスキーが提唱した覇権移行論(Power Transition Theory)が当てはまる形で表出している。
アメリカは、トランプ政権以降、ファーウェイやZTEをはじめとする中国のテクノロジー企業への規制を強めている。中国を取り巻く国際環境が複雑化し厳しさを増す中で、近年の中国のデジタル経済の促進や海外からの技術獲得、軍民融合による発展戦略、国際標準化に向けた中長期的な取り組みは、大きな困難に直面している。
2035年までに「科学技術強国」を目指す中国
そうした中、2022年10月16日、中国共産党第20回全国代表大会における報告で、習近平国家主席は、2035年までの中長期的な発展目標を示した。その発展目標の中には、経済力、科学技術力、総合国力を大幅に向上させ、1人当たりGDPを中等先進国レベルに乗せること、またハイレベルの科学技術の自立自強を実現し、イノベーション型国家の上位に入ることで、「科学技術強国」となることが掲げられた。
中国は現在、国を挙げて技術やサプライチェーンのボトルネックを克服し、外資による中国への投資などによる海外の技術獲得も継続しつつ、模倣やキャッチアップの段階から自らイノベーションを生み出す段階への発展に力を注いでいる。そのための体制を強化するために、科学技術政策における党中央の主導的役割を強化するとともに、国務院の科学技術部の再編を進め、科学技術における軍民融合発展が推進されている。
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