科学技術を通じた「メタ・パワー」獲得目指す中国 「ポスト冷戦期」に激化する米中の覇権争い

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また、2015年に発表された産業政策「中国製造2025」がリアルエコノミーを主眼としているのに対して、この綱要は、とりわけデジタルエコノミーやバーチャルエコノミーを意識したものとなっている。

中国標準の国際化は、新興技術の社会実装とそれに伴う経済成長をテコにして、それを海外に展開し、国際的な産業チェーンを中国に依存させるデファクトスタンダード化によっても目指される。

2023年6月7日には、国際電気標準会議(IEC)が江蘇省南京市で開催され、IECの新興技術戦略国際標準化白書が発表された。これは、カーボンニュートラル分野における新興技術の開発と国際標準の策定を促進するための基盤となるものである。

国際社会における中国の主導的地位を希求

中国共産党の機関紙「人民日報」海外版は、この白書が「中国主導」による成果であり、同分野における国際競争力を強化し、国際社会における中国の主導的地位と発言力(話語権)をさらに強化するのに役立つものであると評価した。

このように、中国は、新興技術の開発と国際標準の策定を通じて、グローバル・ガバナンスに深く関与し、国際社会における中国の主導的地位を希求している。

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中国ではこれを「制度化されたディスコース・パワー」(制度性話語権、Institutional Discourse Power)の強化として位置づけている。この「制度化されたディスコース・パワー」は、国際政治経済学において、アメリカの国際政治学者・スティーヴン・クラズナーが提起する「メタ・パワー」概念に重なり合う。

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