科学技術を通じた「メタ・パワー」獲得目指す中国 「ポスト冷戦期」に激化する米中の覇権争い

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今年3月の全国人民代表大会(全人代)では、国家機関である国務院の科学技術部の再編が可決されるとともに、新たに中国共産党内に中央科学技術委員会を設立することが公表された。

この中央科学技術委員会は、全人代終了直後の3月16日付で公表された党と国務院の連名による「党および国家機構改革方案」によれば、党中央による科学技術活動に関する集中的で統一された指導力を強化するために設立されるもので、党や政府の科学技術関連機関の調整を行い、国家イノベーションシステムの建設と科学技術システムの改革を統一的に計画、促進する党中央の政策決定および議事調整機構とされる。

今後、中央科学技術委員会において、国家の科学技術発展に関する重要な戦略や科学研究プロジェクトの研究や審議、決定を行い、国家実験室等の戦略科学技術力を統一的に計画・配置し、軍民科学技術融合発展の統一的な調整が行われることとなる。また、科学技術部の再編は、そうした国家のイノベーションや科学技術に関する政策実務を、党中央の指導の下でより効率的かつ効果的に担うためのものとみられる。

2.科学技術を源泉とする「ハードパワー」の追求

中国が科学技術に力を入れ、「科学技術強国」を目指すに至った背景には、科学技術を源泉とする経済力や軍事力といった国力、すなわち「ハードパワー」の追求がある。

経済面では、国内要因として、2000年代後半から労働投入・資本蓄積型の経済成長に限界がみられるようになったことが挙げられる。また、外部要因として、人工知能(AI)やビッグデータ、モノのインターネット(IoT)、クラウドコンピューティング、量子などに代表される新たな技術革命と産業変革が世界の経済競争力を再構築しつつあることに対応したものでもある。

イノベーション・エコシステムの確立に注力

そのため、中国は経済成長を技術革新に求め、「イノベーション駆動型」へと成長モデルの転換を目指して、科学技術の中長期的な発展に力を注いでいる。

とりわけ特徴的なのは、これまでに445の新型工業化産業モデル基地を認定し、「軍民融合発展戦略」の下で新興科学技術の産業クラスター化によるイノベーション・エコシステムを確立しようとするなど、経済建設と国防建設を一体的に進めようとしていることである。

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