「部下が離れていく人」が知らない適切な距離感 「心理的安全性」で部下も上司も悩んでいる

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一例を紹介しましょう。中堅社員で対人リスクを感じていたAさんは、心理的安全性の確保ができず、仕事に集中できないという悩みを抱えていました。例えば、会議中に理解できない専門用語らしき言葉が話題に出たとき、わからなくても「それってどういう意味ですか」と聞くことができない。「無知だと思われる不安」がある状態なのでしょう。

また、「この内容で決定としましょう」と同じ組織のメンバーたちが盛り上がっているときに、「リスクについて検証しましたか」と言い出せない。ネガティブだと思われる不安があるからです。

これらの不安は、社会的に自分の安全を守るために生まれています。周りから否定されないよう、非難されないように自分の安全を守ろうとするばかりで、かえって心理的安全性が低い場を作ってしまっているのです。

不安解消の方法は人それぞれ

Aさんは「このままではまずい、だんだん会社に行きたくなくなってきた」と感じ、退職まで考え始めてしまいました。ただ、何とか状況を改善して、いまの会社で仕事を続けたい……そう考えた結果、Aさんは自分なりに対策を考えました。

そこで出た答えは、いまの同じ部署に限らず、過去に関わった上司・先輩・同僚のおかげで、不安が解消されていたように思えた状況を振り返ること。そして、その状況の再現ができれば、改善に向かうかもしれないと考えたのでした。

そこで、入社した5年前から、現在までの記憶を辿りました。すると、3年前に上司であったKさんと話していたときは、安心感があったことが思い返されました。Kさんは巧みに話を聞いてくれたり、笑顔で「心配しなくていいよ」と不安を払拭する言葉を投げかけてくれたり。「よく頑張っているね」と仕事ぶりを観察した状況とともにほめてくれる人でした。

Aさんは人事部に相談のうえで、元上司であるKさんと久々に話す機会をもらいました。すると不安がだいぶ解消されたと感じられたのです。そのことをKさんに話したところ「定期的に話をしましょう」ということになりました。いわゆる、メンターのような存在になってくれたのです。Aさんはその後、随分と苦悩が和らぎ、働きやすくなったようです。

職場における「心理的安全性の確保」というと壮大なことに思えたりもしますが、このように誰か一人でも自分の不安解消の支えになってくれる人が見つかると大きく違ってくるということなのでしょう。あくまで、一例ですが参考にしてみてください。

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高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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