「我が家は普通」と油断する親が子に与える影響 医師おおたわ史絵氏が乗り越えた「母娘問題」

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誰しもが自分の価値観で子育てをしますが、自分たちが少しゆがんでいるかもしれないとは思いませんよね。子育てや人間のあり方に正解はないのだと思います。ただ、親子の関係がゆがんでいることに気づかないままでいると、誰かにとっての愛が、大きな罪につながってしまうこともある。絵に描いたような普通の家族といったものは幻想かもしれませんね。

親子関係は悩むものだという前提でいたほうがいいのかもしれません。どの家庭にも大なり小なり悩みはあり、どのような親だって正解がわからず、正解があるのかどうかも不確かななか、もがきながら親をやっているのだと感じます。「親ガチャ」という言葉がありますが、親ガチャ失敗と嘆くより自分自身が大人になったとき、または親になったとき、毎朝「幸せだな」と思えるようになることが大切だと思います。

ゆがんだ親子問題に負けない「学び」

そのための軌道修正には、何より「学び」が必要です。どのような分野でもいいから一生懸命学び知識と教養を身につけることが、ゆがんだ家庭環境から抜け出す唯一の方法だと考えます。

夜、繁華街や娯楽施設を歩き回って知り合った人より、学びの場で知り合った人や学びで得た知識のほうが救ってくれる確率は高いと思うんです。私自身、ベランダで毎日泣き暮らしていた日々のなかでも見聞を広げ学び続けたからこそ、医師としての仕事以外の幅を広げることができ、世界が広がったことで視野が広がり救われたと実感しています。

泣いて苦しんでも生きていくことはできるけれど、何もしなければどこにも出られないんですよね。何歳になっても「変わりたい」「学びたい」と思うのに遅すぎることはありません。母が亡くなった後で依存症の治療についての深い知識や学びを得ました。

生きている間にもっと知識があったらと後悔する自分もいますが、今、プリズン・ドクターとして犯罪者や依存者の治療に専念する日々はその後悔を和らげ、救いとなっています。気づいたときが、あなたが変わるタイミングが来たということだと思うのです。

(構成:中原美絵子)

おおたわ 史絵 総合内科専門医・法務省矯正局医師

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おおたわ ふみえ / Fumie Otawa

東京女子医科大学卒。内科医師の難関 総合内科専門医の資格を持ち、多くの患者の診療にあたる。 近年では、少年院、刑務所受刑者たちの診療にも携わる数少ない日本のプリズン・ドクターである。 近著は『プリズン・ドクター』(新潮社)、『母を捨てるということ』(朝日新聞出版)。

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