「親といるとなぜか苦しい、イライラする」の正体 大人になってからも尾を引く「愛着障害」とは

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子ども側に立ってみれば、親と一緒にいると何だか居心地が悪い、苦しいというのは1つのサインです。ただ「親と一緒にいると居心地が悪くて苦しい」という1つの現象として片づけられる話ではなく、今、感じている心身の不調は、ひょっとしたら親の愛着が不安定だった、もしくは欠けていたがゆえに起こっている問題かもしれません。

改めて注目されている「母子問題」

大人の生きづらさや心身の不調、家族間のトラブルの根源として、近年、とみに「母と子の関係」がクローズアップされています。私が序文を寄せている『親といるとなぜか苦しい』もその1冊といえますが、なぜここまで「母子問題」が国内外で注目を浴びているのでしょうか。

社会通念の良し悪しは別として、かつて子どもを生んだ女性は、ある程度子育てに専念できる環境がありました。

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ところが近年、女性の社会的な役割が増しているなかで、子どもを生んだ女性が母業に専念できない、あるいは、そんななかで母業に専念することで、社会人としてのアイデンティティーが欠けているように感じてしまう。こうした「女性を取り巻く社会状況」の変化、それにともなう「女性の意識変容」の1つの結果として、愛着という生来の仕組みが脅かされやすい状況が生じているのではないかと思います。

もちろん、さまざまな要因で、母親が子育てに専念できない状況は、以前の社会にもあったでしょうし、愛着の仕組みがうまく機能しない親は一定数存在したでしょう。しかし、育児放棄をされた野生動物の子どもが生きられないように、人間においても、愛着が機能しない親のもとに生まれた子どもは早くに亡くなっていたのです。それが今では医療や社会的な受け皿が発達したことで、たとえ愛着が発動しない親の元に生まれてしまっても成長できるようになりました。

かつてなら失われていたかもしれない命が、守られるようになったこと自体は、もちろん、すばらしい変化です。ただ、親に代わって誰かが守り育ててくれたとしても、親との安定した愛着を欠いている点は解消されません。そういうわけで、愛着障害に起因するさまざまな困難を抱えて生きていかざるをえなくなっている大人が、この現代社会には相当数いると考えられるのです。

(構成:福島結実子)

岡田 尊司 精神科医、作家

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おかだ たかし / Takashi Okada

1960年香川県生まれ。東京大学文学部哲学科中退、京都大学医学部卒、同大学院にて研究に従事するとともに、京都医療少年院、京都府立洛南病院などで現代を生きる人々の心の課題に向かい合う。現在、岡田クリニック院長(枚方市)。日本心理教育センター顧問。著書に『愛着障害』(光文社新書)『発達障害「グレーゾーン」』(SB新書)、監訳書に『親といるとなぜか苦しい』(東洋経済新報社)など多数。小説家・小笠原慧としても活動し、作品に横溝正史賞を受賞した『DZ』などがある。

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