【後編】「母の愛情不足」に悩んだ45歳彼が見た光 カウンセリングに行けなくなった彼が感じた事
5回目のカウンセリングをキャンセルした約半年後に、彼は6回目のカウンセリングの予約を入れた。1回目のカウンセリングから、ほぼ1年が経過していた。
彼は、ここにいたるまでのあいだに、なにがあったのかを話しはじめた。
「4回目のカウンセリングが終わったあと、自宅に帰ってから動けなくなりました」
敷きっぱなしの布団のうえに膝から崩れ落ちたという。気がつくと、そこから数日が経過していた。そのあいだ、ほとんど眠れなかった。ときおり急に涙が出てきた。なにがなんだかわからない混沌とした日々だった。
喉が渇いて水道の蛇口をひねり、水だけは飲んだが、食欲はなかった。トイレに行くのさえ面倒だった。生きているというよりも、死んでいないだけだった。
深い谷底に落ちていく感覚だった
それから、ひとりで怒ったり怖くなったりを繰り返していた。
「大の大人が部屋のカーテンを閉めきって、頭から布団をかぶって、怖い怖い、と言っているのだから、いま思うと笑えますよね。だけど、あのときは本当に怖かった。まるで足首だけを摑まれて逆さ吊りにされ、そのまま手を離されて深い谷底に落ちていくのではないかという感じです。
そして、自分の足首を摑んでいるのは別の自分。落とされたくなければ、落とそうとしている自分の言うことに従わなければならない。それは、いままで通りに生きろ、という指示です」
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