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【後編】「母の愛情不足」に悩んだ45歳彼が見た光 カウンセリングに行けなくなった彼が感じた事

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  • 植原 亮太 精神保健福祉士・公認心理師
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「5回目のカウンセリングをキャンセルして、そのあともしばらくは、家のなかでひきこもりの生活を送っていました。暗い部屋で、自分は人としてどこか欠落しているところがあるのではないかと考えていたんです。

これは、ずっと思ってきたことでした。自分は人を避けてしまう。人から親切にされると居心地が悪くなる。いいことが起こると不幸がやってくると思ってしまう。

期待は裏切られるものだという考えがこびりついている。そういう話を、ここでしました。すると、『どうしても虚しくありたいのですね』って、さらりと言われてしまいました。それから、『虚しくはじまった人生なのだから、村木さんにとっては虚しいことが、生きていることですね』と言われました。これは打撃でした。その通りだと思ったからです。

ずっとそうやって生きてきたんです。それがわかったから、もうなにも話すことはないと思ったんです。あのときカウンセリングに行くのが嫌になったのは、きついことを言われるからではなくて、本当のことに気づいてしまうからでした。人生の『道理』が見えたような気がしたんです」

期待を裏切られてきた人生だった

いい子にしていれば母親が振り向いてくれる、がんばって我慢していれば、いつかは父親が助けにきてくれる、しかしそんな期待は見事に裏切られ続けた。これが彼の人生初期に連続した体験である。

期待など、やがて壊れてしまうものだった。そんなもので支えられる人生なんて、余計に傷つくだけだった。ならば、「いいこと」が起こるかもしれない期待や予感は、はじめから感じないようにするか、感じたら壊すしかない。これが彼の道理である。

彼には結婚を考えた女性がいたという。しかし、彼女が「いい人」だったことが原因で一緒にいられなくなった。しあわせを感じたら急に心がざわついた。

そんなものほしくないと思った。教員としての能力を評価されて、県内有数の進学校への赴任を打診されたことがあった。しかし断った。人生がうまく回りだすかもしれないと期待をした自分が嫌になったからだ。

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【心理的な孤立が消えるとかえって不安に】

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