でも、実際にはどんな組織でも社員の1人や2人が休んだところで業務がストップすることはありません。その証拠に、インフルエンザや忌引などで休暇を取る人が出ても、職場の仕事は当たり前のように回っています。今出勤しているメンバーでなんとかやりくりできるのです。
「休めない」「私ががんばらないと」という思い込みも、一種の不安に押しつぶされている状態です。無理を続けたら取り返しのつかないことになりかねないのに、自分の居場所がなくなる不安から抜け出せない。結果的に、本当に心や体を壊してしまう人が後を絶たないのです。
私自身、産業医として、無理を重ねているまじめな社員の方と実際に接する機会があります。そんなとき、次のようにアドバイスをしています。
「あなたが休んだとき、その穴を埋めるのは、あなたの責任ではなく、会社の責任です」
組織は、自分1人の力だけで成り立っているわけではないと気づいてほしいのです。

「みんなと同じ」で本当に安心?
★一億総中流時代には、夢や目標の実現に向けて前向きに行動する人がたくさんいた。
★格差社会では「みんなと同じ」=「99人の貧困層」。
自分自身の不安と向き合わずに、やみくもに不安から逃げようとする人がいます。逃げるときには2つの方法があります。1つは、何もしないという方法。そしてもう1つが、みんなと同じ行動を取るという方法です。
一度会社のような組織に入ると、不当な待遇を受けたとしても、抜け出すことに不安を感じてしまいます。同じようにつらい思いをしている仲間のみんなと一緒のほうが安心だからです。
かつて日本が高度成長期だった頃は、会社で努力すれば出世ができました。思うように成果が出せなくてもクビになる心配はなく、定年までの生活は保証され、給料も年齢とともに確実に上がっていました。
当時は世の中全体に安心感がありました。とくに意識しなくても「みんなと同じ」という感覚があったのです。
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