自己肯定感に悩む人を多く生む現在が世知辛い訳

時代の要請というよりゲームの初期設定のように

自己肯定感ブームの裏側にあるのは?(写真:moka/PIXTA)

最近、自己肯定感というキーワードをさまざまな媒体で目にするようになった。専門家だけではなくタレントや芸能人などがこぞって、「自己肯定感の上げ方」や「低い自己肯定感への対処法」を語るなど、自己肯定感は今やちょっとしたブームである。

ちなみにGoogleトレンドでは2017年頃から右肩上がりになっており、それに合わせて自己肯定感をテーマにした本も次々と刊行されている。出版書誌データベースによれば、少なくとも書名・副題に自己肯定感という言葉を含む本は、2018年11件、2019年21件、2020年28件、2021年37件と増加傾向にある。

メンタルケアの自己責任化と孤独・孤立の深刻化

自己肯定感とは、わかりやすく言えば、「ありのままの自分を受け入れられる肯定的な感覚のこと」「自分の存在に価値があると思えること」。もともとはセルフエスティーム(self-esteem)を日本語に訳したもので、自尊心や自尊感情とほとんど同じ意味で用いられていることが多い。

自己肯定感が改めて世間の注目を集め、関心を呼んでいる背景には、コミュニケーション能力の根幹にある感情管理・メンタルケアの自己責任化と、社会的なつながりの希薄化に伴う孤独・孤立の深刻化があることが考えられる。

以前あるセミナーを取材した際、講師のコンサルタントが、採用面接時にストレス耐性がない人、つまりメンタルが弱い人を短時間で見抜くテクニックを開陳したところ、そこだけ企業担当者の質問が殺到していたことが非常に象徴的だ。

これは人間関係でトラブルを起こしたり、すぐに仕事を辞めたりする可能性が高い人物を事前にスクリーニングしておく予防的措置である以上に、一定のヒューマンスキルが職業能力において重要な位置を占めるようになり、それを自助努力で改善できない者は排除されるという流れができつつあることの表れである。

自己肯定感には、生育歴が絡んでおり、とりわけ両親からの育てられ方も大きい。また、その後の人生でどのような人物と出会い、どのような経験を積んだかによっても変化する。偶然性が作用するだけでなく、社会状況からの影響も少なくない。

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