凶悪犯を報じるほど次の凶悪犯を誘う社会の惨状 語るべきは命を奪い傷つけた犯人の名前ではない

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彼らは蜃気楼に向かって石を投げるような行為に強烈な意味感を持ってしまっている(写真:Graphs/PIXTA)

大阪・北新地で起きたビル放火殺人事件から1カ月が経った。死亡した容疑者の男性のスマートフォンを解析したところ、検索履歴に「死ぬ時くらい注目されたい」などという言葉が残っていたことが判明し、過去の類似事件や凶悪犯罪についても調べていたことが衝撃を与えている。

これまでの捜査でも、36人の犠牲者を出した京都アニメーションの放火殺人事件に関する新聞記事が男性の住居から見つかっていることなどを踏まえると、単にマスメディアを媒介した「模倣犯」の疑いが強くなるだけでなく、自己顕示欲を満たすための人生の総決算として犯罪を計画した可能性もうかがえる。

著名人の自殺報道が与えかねない強い影響

マスメディアと模倣に関してまず重要な視点になるのは「ウェルテル効果」だ。「模倣自殺(copycat suicide)」とも言われており、社会学者のデヴィッド・フィリップスが1970年代に実証した。名称は1774年にゲーテが著した小説『若きウェルテルの悩み』に由来するもので、主人公の自殺という結末に誘発された当時の若者が、同じように自殺を試みた例が多発したからであった。

日本での先駆けは1903(明治36)年のエリート学生、藤村操の華厳滝への投身自殺に伴う自殺の連鎖である。「人生は不可解である」という謎めいた言葉を残した遺書「巌頭之感」などが大々的に報じられた。

昨年12月18日に札幌市のホテルから転落し、亡くなった女優について臆測を含めてさまざまな情報が飛び交った。厚生労働省は翌日、「死因が自殺である可能性があるとの報道」が行われていることに触れ、「著名人の自殺に関する報道は、その報じ方によっては、著名人をロールモデルと考えている人(とりわけ子どもや若者、自殺念慮を抱えている人)に強い影響を与え、『模倣自殺』や『後追い自殺』を誘発しかねません」と警告した。

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