週刊東洋経済 最新号を読む(5/23号)
東洋経済オンラインとは
ライフ #不安な時代、不機嫌な人々

凶悪犯を報じるほど次の凶悪犯を誘う社会の惨状 語るべきは命を奪い傷つけた犯人の名前ではない

9分で読める
2/5 PAGES

また2020年のデータから著名人の自殺2件とその後の自殺者数の動向を分析した結果によると、ある俳優の自殺日から10日間で、約200人が自殺・自殺報道の影響を受けて亡くなった可能性があるとして、センセーショナルな報道を目にしたことが引き金になっているとの見方を示した(いのち支える自殺対策推進センター(JSCP)主催「第1回自殺報道のあり方を考える勉強会」実施レポート)。

このようなマスメディアと模倣の関係性は、大量殺人においても生じているとみられる。

例えば、アメリカでは多数の犠牲者を出す銃乱射事件が新たな銃乱射事件を誘発するとの知見が定着しつつある。数学者シェリー・タワーズの研究チームが1998~2013年にわたる学校での銃撃や大量殺人(4人以上が死亡した事件)などのデータを調べたところ、これらの事件の発生確率が直前に同様の事件が起こった場合に大幅に高まることがわかった。伝染性が高まる期間は平均13日間であることも明確になったという(“Contagion in Mass Killings and School Shootings”Sherry Towers, Andres Gomez-Lievano, Maryam Khan, Anuj Mubayi, Carlos Castillo-Chavez)。

盛んに取り上げられることが次なる事件を後押し

タワーズと同じく模倣犯について研究している犯罪学者のジリアン・ピーターソンは、「これは社会的伝染病の一種であり、自殺伝染病のようなものだ」と主張した。そして身も蓋もない話ではあるが、伝染性のある学校での銃撃や大量殺人を特徴づけているのは、それらの事件が報道された量だというのである(“Mass Shootings Can Be Contagious, Research Shows”/2019年8月6日/NPR)。つまり、国内外で盛んに取り上げられることが次なる事件を後押しする一因になっているかもしれないのだ。

社会人類学者のエリオット・レイトンは、「怒り悩める者たちは、社会が価値を認める暴力的アイデンティティを獲得することによって、主流文化に参入することができる」と指摘している。それはマスメディアや彼らが用意した専門家たちが凶悪犯罪それ自体にニュースバリューがあると考え、犠牲者数の多さがわたしたちの社会に対する何か深遠なメッセージを突き付けているかのように反応する構造と一体になっているからである。

次ページが続きます:
【アイデンティティを意識した凶悪犯罪】

3/5 PAGES
4/5 PAGES
5/5 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象