世界20カ国以上で刊行された同書には、「私の目撃証言と持続可能な世界へのヴィジョン」という副題がつけられ、人類が過去数十年でどれほど地球環境を変えてしまったか、そして人類と地球の未来のために何をすべきかが切実に語られている。
同書から、人類による魚の乱獲がもたらした問題について、抜粋、編集してお届けする。
世界中の海から大型魚の90%を取り尽くした人類
大型の商業漁船が初めて国際水域まで出ていくようになったのは、1950年代のことだった。
法的には、国際水域は誰の所有地でもなかったから、そこでは好きなだけ漁ができた。初めのうちは、それまでおおむね手つかずだった海域で漁が行われ、わんさと魚が取れた。
ところが数年もすると、どの海域でも、ほとんど空っぽの網ばかりが引き上げられるようになった。
そこで漁船は場所を変えた。ここで取れなければ、ほかへ行けばいいではないか、そもそも海は無限と言っていいほど広いのだから、と。
年ごとの漁獲量の推移を見ると、各海域の水産資源が次々と枯渇していったさまがひと目でわかる。
1970年代半ばには、ほんとうに豊かな漁場と呼べるのは、オーストラリア東部沖、アフリカ南部沖、北米東部沖、それに南極海だけになっていた。
1980年代に入ると、遠洋漁業の漁獲量が著しく減り、大漁船団を抱える国はそれらの船団を補助金で支えなくてはいけなくなった。これは乱獲を推進するために、漁業者にお金を払うようなものだった。
20世紀末の時点で、人類は世界の海から大型魚の90%を取り尽くしてしまっていた。
大きな魚を狙った漁は、深刻な弊害を招く。食物連鎖の頂点にある魚が減るだけでなく、各個体群の中でいちばん大きい部類の個体(例えば、大きいタラとか、大きいフエダイとか)が減るからだ。
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