魚の個体群では、体の大きさが重要な意味を持つ。外洋の魚はたいてい、一生成長し続ける。雌魚の生殖能力と体の大きさとが比例しており、体が大きい雌ほど、多くの卵を産める。
わたしたちは魚を取るのがうまくなりすぎた
したがって、ある一定以上の大きさの魚がすべて漁で取られてしまうと、繁殖に最も貢献できる個体がいなくなって、個体数は激減する。乱獲された海域には、もう大きい魚は残っていない。
この魚との追いかけっこのような漁は、世界じゅうの沿岸の漁業コミュニティーで何世代にもわたって、向上が図られてきた。例によって、ここでも人類はその類いまれな問題解決能力を発揮して、じつにさまざまな漁獲の方法を発明した。
特定の海や天候に合わせた船を作り、海図のように単純なものから、荒波に揺られても規則正しく動くクロノメーターまで、航法装置も考案した。
魚群が現れる場所の予測では、老漁師の経験と勘が生かされることもあれば、音波探知機というハイテクが用いられることもある。
水中を引っ張る網、海面に漂わせる網、魚の群れを周りから取り囲む網、上から海に投げ込まれる網、海底に沈めて、底を這わせる網が、魚を捕まえるために考え出された。
人類は海の深さを隅から隅まで計測し、隠れた海山や大陸棚の地図を作成しており、どこで魚を待てばいいかを知っている。
ディンギーやカヌーのような小舟で漁をすることもあるいっぽうで、何カ月も洋上にとどまれる船で、水中に網の壁を何キロにもわたって張りめぐらせ、何百トンもの魚を一網打尽にすることもある。
わたしたちは魚を取るのがうまくなりすぎた。しかも徐々にではなく、捕鯨や森林伐採の場合と同じで、急激に腕前を上げた。指数関数的に発展するのが、文化の進化の特徴だ。
発明は積み重なる。ディーゼルエンジンとGPSと音波探知機を組み合わせれば、そこから生まれる効果は、それらを単に足し合わせたものではなく、掛け合わせたものになる。
しかし魚の繁殖能力には限界がある。その結果、現在、多くの沿岸域で乱獲によって魚の数が減っている。
外洋の魚をすべて取り尽くしてしまうというのはあまりに無謀な行為だ。海の食物連鎖は陸上のものとは大きく異なっている。
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