全国で勢力拡大する「シカ」増えると困る理由 天敵不在で無双状態、生態系破壊の原因にも
冬の山といえばスキーですが、「狩猟」の場としての顔もあります。日本の場合、鳥獣の狩猟期間は安全確保の観点から木の葉が落ち見通しの良い、かつ鳥類の繁殖や渡りに影響のない冬期に限定されています(都道府県によって期間は若干異なる)。
私の住んでいる静岡県では、11月1日より銃によるニホンジカ(以下シカ)・イノシシ猟が解禁となり、他の都府県よりやや早いスタートとなりました。静岡県で一足先にこれらの種の猟が解禁になるのは、頭数を減らす目的があるからです。
今回は、その中でもシカに焦点をあて、シカ増加の原因と、シカがもたらす問題について解説していきます。
シカは「20世紀後半」に急増
シカの個体数は、時代によって増減を繰り返してきました。環境省によると、全国のシカ(北海道を除く)の推定個体数は 189 万頭( 2019 年度)で、2014 年度をピークに減少傾向にありますが、生息数を国が目指す適正水準とするためには、引き続き捕獲強化が必要とされています。
また、1978年度から2018年度のまでの40年間で、生息分布が約2.7倍に拡大していることが明らかになっており、拡大の一途をたどっています。ではなぜ全国でシカが「勢力拡大」しているのでしょうか?その原因はひとつの単純なものではなく、様々な要因が絡み合っています。
①天敵の不在
かつての日本には、シカを捕食するニホンオオカミが1900年代初頭まで生息していましたが、感染症の流行や、家畜被害対策の観点による駆除などによって、絶滅しています。自然界に天敵がおらず捕食圧がないことが、シカの生息数増加の一助となっています。
②降雪量の減少
近年、スキー場の開業時期が例年に比べ遅れたり、雪が降らずに営業を見合わせるスキー場がでるなど、冬の積雪異常がニュースになることが多くなりました。昨今の地球温暖化によって冬季の積雪量が減ったことは、自然界にも影響を与えています。シカにとっては、豪雪がなくなったことで冬季も充分なエサを食べられるようになり、自然減の原因となっていた冬季の豪雪によるエサ不足が軽減され、結果として生存率が上がっています。
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