全国で勢力拡大する「シカ」増えると困る理由 天敵不在で無双状態、生態系破壊の原因にも

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③日本の森林政策「拡大造林」

シカの生息する山林を巡る政策もまた、シカの増加に拍車をかけています。日本の森林環境の大きな転換期となったのが、戦後日本の「拡大造林政策」です。

シカに好意的なイメージを持つ人も多いと思いますが…(写真:あや / PIXTA)

太平洋戦争後の復興に伴う木材需要が増加すると、国内での木材生産が推進されました。政府は、1950年代から60年代にかけて、木材の安定供給を図るために山林を開拓し、木材として有用なスギ・ヒノキを主とした大規模な人工林を造成しました。これが戦後日本の「拡大造林政策」です。

人工林を造るために、それまであった天然の広葉樹の森を皆伐し、一面はげ山となった山には、スギやヒノキの稚樹が大量に植樹されました。高い木が切り倒され、日当たりがよくなった山林が草原化したことや、植樹されたスギ・ヒノキの稚樹は、シカにとっては大量のエサとなりました。このことがシカの爆発的増加の引き金になりました。

スギ・ヒノキの人工林の造成は、私を含め多くの方が苦しんでいる花粉症の原因ともなっていることを考えると、現代を生きる私たちにも影響を及ぼしているといえますね…。

④シカの捕獲禁止措置

現在では増加傾向のシカも、かつては絶滅の危機に瀕したことがあります。1900年代初頭までの、食料や毛皮利用を目的とした乱獲によって、全国的に個体数が激減し、地域によっては絶滅したところもあります。その後1950年代までは禁猟、1955年からオスジカのみ解禁され、全国でメスジカが狩猟解禁されたのは2007年と、つい最近のことです。この規制緩和の遅れも、シカの増加に大きな影響を与えています。

⑤人のくらしの変化

森で遭遇したメスジカ(写真:筆者撮影)

現在の日本では、耕作放棄地の増加が全国的な問題となっています。人間がそれまで管理していた土地に人手が入らなくなることにより、放棄地が生息場所として利用されるようになっています。

また、狩猟人口が減少していることにより、シカに対する捕獲圧が低下していることも、シカの増加を促進する一因となっています。大日本猟友会によると、1980年の狩猟免許交付数は約46万件だったのに対し、2016年には約20万件と半数以下になっています。

このように、シカが増加している原因は様々ですが、すべて人間の営みが関係しているといえます。時代に応じた様々な人間活動が自然に対し与えた影響は、結果としてシカが繁殖しやすい環境を作り出し、それに適応したシカがその個体数を徐々に増やして今日に至っているというのが現状です。

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