全国で勢力拡大する「シカ」増えると困る理由 天敵不在で無双状態、生態系破壊の原因にも

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これまで見てきたように、シカは様々な要因から増加の一途をたどっています。かつては自然のサイクルの中で保たれていたシカの生息数が過剰に増加していることで、自然界や人間社会に様々な影響をもたらしています。シカの増加がもたらす問題には、どのようなものがあるでしょうか?

①山林の生態系破壊

増えすぎたシカは、自然界の植物を餌として大量に消費しています。シカが草を食べ尽くし地表がむきだしになると、雨が降った時に地中に水がしみこみにくくなり、地表を流れ去る水量が増え、土壌流出を引き起こします。

私たちが使う水は、森林が起こす水のサイクルの恩恵を受けているので、この問題は我々の暮らしと無関係ではありません。また、山には水を貯えることで、河川の流量を調整し、洪水や渇水を緩和している保水機能が備わっているので、森林の荒廃が進むことで、災害の頻度や規模も大きくなることが予想されます。

また、シカは数ある植物の中でも、好きな植物を選り好みして食べています。シカの多い地域では特定の植物がなくなり、シカが好まない植物種のみが残る森になることがあります。また、シカが届く高さの葉を食べ尽くし、葉がなくなった木の下部と、葉の残った上部の境界“ディアライン”が出現します。これらの食害の影響は、昆虫や鳥などの生息環境に影響を与えており、森の生物多様性が損なわれる原因ともなっています。

(写真左)森で見られるディアライン(写真右)シカが好まない植物・バイケイソウ(共に筆者撮影)

②農作物や林業への被害

樹皮がはがれた木(写真:筆者撮影)

シカの増加原因に、耕作放棄地の増加を挙げました。それまで農作業で人間が頻繁に出入りしていた場所に、農業を辞めることで人間の圧がかからなくなります。すると、自然界と人間の境界があいまいになり、野生動物は人里近くまで進出してくるようになります。農林水産省によると、2018年度の野生鳥獣による農作物被害額は約158億円で、そのうちシカによる被害額は約54億円で、種別でみると最も被害額が大きい結果となっています。

シカの食害は、林業にも及んでいます。植樹した木の枝葉や、樹皮を剥いで食べることが原因で、林野庁の調査によると2019年度の調査で野生鳥獣による森林被害面積は全国で約5000ha、そのうち約3,500haがシカによるもので、実に約7割を占めます。このように、シカの増加は一次産業にも多大な影響を及ぼしています。

③交通事故

シカの出没を警告する標識(写真:筆者撮影)

一般生活の中で、最も直接的な被害を受ける可能性があるのが、シカの交通事故。シカが多数生息している山沿いの道や林道などの道路では、警告看板が出ているのを目にされたことがあるかと思います。

道路のわきの茂みから突然飛び出して来て、衝突事故を起こすというもの。ひどい場合は自走不可能や、とっさのハンドル操作を誤り重大事故に発展する恐れもあります。

シカの飛び出しの可能性があるところでは、スピードを出し過ぎず安全運転を心掛けましょう。1匹が道を横切ると、同じ群れの仲間があとから飛び出すことがあるので、注意が必要ですよ。

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