古典を読むとわかる「平和が戦争を生む」逆説 頭でっかちでは得られない成熟した大人の知恵

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お面をかぶった和装の人
「古典の知恵」は「成熟した大人の知恵」です(写真:nam/PIXTA)
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中野剛志(評論家)、佐藤健志(評論家・作家)、施光恒(九州大学大学院教授)、古川雄嗣(北海道教育大学旭川校准教授)など、気鋭の論客の各氏が読み解き、議論する「令和の新教養」シリーズ。
中野氏の新刊『奇跡の社会科学』(PHP新書)をめぐって、いかに古典を現代に生かすか、その考え方や方法について徹底討議する。今回はその前編をお届けする。

なぜ古典の知恵が無視されるのか

中野:昨今では行き過ぎた新自由主義政策が格差や貧困をもたらしたとして、新自由主義の見直しを求める声が強くなっています。日本でも岸田総理が「新しい資本主義」を掲げ、市場に任せればすべてうまくいくという新自由主義的な考え方がさまざまな弊害を生んだとはっきりと述べ、その転換を訴えています。

しかし、新自由主義政策が今日のような悲惨な状況をもたらすことは、最初からわかっていました。新自由主義にはその名の通り、ご先祖となる(旧)自由主義が存在します。(旧)自由主義は19世紀から20世紀にかけて、イギリス発で世界に広がりました。19世紀のイギリスは産業革命によって生産技術や生産設備、交通手段が飛躍的に進歩しましたが、その一方で多くの労働者たちが劣悪な環境のもとで酷使され、格差や貧困が拡大しました。産業革命による環境破壊も生じました。

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