母親をひとりぼっちで介護する29歳男性の困窮 介護に縛られる20〜30代の知られざる現実

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2017年の総務省調査によると、悟さんのような若者ケアラーは30歳未満で約21万人、30代では33万人いる。2012年調査時より30歳未満では3万人以上も増加している。

社会に認知されず孤立

これまでも18歳未満のヤングケアラーには現金給付などの支援があったが、若者ケアラーにはない。なぜなら実態がわからないからだ。ヤングケアラーは学校という場がケアラーたちの苦境を周囲が察知する場になっているが、若者ケアラーには、そうした場が少ない。

ケアラー本人がSOSを発しない限り外からは見えないのだが、当の本人は「言いたくない」という心境を抱えているケースが多い。

筆者自身、32歳から認知症の祖母と、がんと精神疾患を患う母親を10年にわたって介護したが、過酷な現実を外に打ち明けるまでに相当な時間がかかった。同世代が結婚や育児をし、仕事で成果を上げる中、劣等感や羞恥心を抱え、外には言い出せないのだ。

こうした事情から若者ケアラーの実態は社会にほとんど認知されていない。実態が把握できないため、行政は支援に動けない。その結果、当人たちは孤立している。

若者ケアラーの孤立や生活不安を一時的にでも解消するためにいくつか提案をしたい。日本学生支援機構の奨学金返済を免除するか、減免すること。生活困窮者や多重介護者については家族介護慰労金の要件を緩和すること。介護休業や介護休暇の取得率をアップさせること。また当人たちが気軽に集まり、悩みを打ち明けられるような居場所を増やすことだ。

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