49歳の慶応大元教授が脳梗塞で陥った「超孤独」 暗転した人生「死ぬのも生きるのも怖い」
文字がまったく読めない
ハロウィンで飾られたかぼちゃの絵を指さして、渡部和孝は言う。
「あれは何て言うんでしたっけ? あの、そこにある、丸い……」
「かぼちゃのことですか?」と記者が聞くと「そうでした。そんなこともわからなくなっていて」と口ずさみ、うつむいた。
言葉が出てこない。文字を正しく認識できない。脳梗塞の後遺症による失語症だ。第一線の研究者として活躍し、語学も堪能だった渡部にとって、これほどつらいことはない。「えーと、言葉が出てこなくて……」。簡単な言葉を思い出せず、何度も沈黙が流れる。それでも長い時間をかけて記者の質問に答えた。
渡部が病に倒れたのは2019年5月。マンションの管理人と話していたところ、呂律が回らなくなった。歩くことはできたため、タクシーに乗るかのように救急車で搬送された。持っていた本を病院で開くと、まったく文字が読めなくなっていた。
脳梗塞の手術を受けたが、言語障害や注意力障害といった障害が残った。入院直後のまったく字が読めないという状況からは回復し、退院後は出向していた内閣府の経済社会総合研究所で非常勤として働き始めた。しかし、文字を読むスピードが遅く、ひらがなやカタカナを単体で認識できなくなっていた。
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