母親をひとりぼっちで介護する29歳男性の困窮 介護に縛られる20〜30代の知られざる現実

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孤立する20~30代の若者ケアラーの実態はあまり知られていない(デザイン:小林由依、杉山未記)
介護をしていることを周囲に理解されない若者がいる。2019年、当時21歳の女性が介護をしていた認知症の祖母を殺害する衝撃的な事件が起きた。幼稚園教諭として社会人1年目だった女性は仕事と介護の両立に苦しんだ。職場に「介護をしている」と伝えたが信じてもらえなかったという。
「ヤングケアラー」の認知度は上がる一方、孤立する「若者ケアラー」の存在はあまり知られていない。特集「1億『総孤独』社会」の一覧はこちら

近年、大人が担うと想定されていた家事や家族の介護を日常的に行う18歳未満の人々「ヤングケアラー」がクローズアップされている。今年1月に公表された厚生労働省の調査によると、小学6年生では15人に1人が該当するという。

1人で母親の介護を担う悟さん。介護離職、生活困窮に陥っている(写真:本人提供)

一方、ヤングケアラーに比べると認知度が低く、見落とされがちなのが18歳からおおむね30代で家事や家族の介護を担う「若者ケアラー」の存在だ。

「障害のある母親は介護サービスを利用してくれない。父親も介護にはまったく協力してくれず、暴言を吐いてばかり。弟は遊びほうけて借金まである。自分が家族の世話をするようになって7年。もう死にたい」

そう語るのは関西在住の悟さん(29歳、仮名)。父親、母親と弟2人の5人家族だ。

悟さんの生活環境が一変したのは2015年のことだった。買い物に行った際、母親が突然倒れ、救急車で運ばれた。脳出血だった。

1人で母親の介護を担うことに

1カ月入院した後、リハビリを経て退院することはできたが、半身マヒが残り、介護が必要な身となった。悟さんは父親に相談したが「おまえが面倒を見ろ」と一蹴された。2人の弟も協力する様子はない。悟さんは1人で母親の介護を担うことになった。

母親は食事から入浴、排泄(はいせつ)まで日常生活のあらゆる場面で介助を要した。「要介護1」と認定されたが、本人は「面倒だから」と介護サービスの利用を拒否。さらに、身体が思うように動かないいら立ちを悟さんにたびたびぶつけた。

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