近年、大人が担うと想定されていた家事や家族の介護を日常的に行う18歳未満の人々「ヤングケアラー」がクローズアップされている。今年1月に公表された厚生労働省の調査によると、小学6年生では15人に1人が該当するという。
一方、ヤングケアラーに比べると認知度が低く、見落とされがちなのが18歳からおおむね30代で家事や家族の介護を担う「若者ケアラー」の存在だ。
「障害のある母親は介護サービスを利用してくれない。父親も介護にはまったく協力してくれず、暴言を吐いてばかり。弟は遊びほうけて借金まである。自分が家族の世話をするようになって7年。もう死にたい」
そう語るのは関西在住の悟さん(29歳、仮名)。父親、母親と弟2人の5人家族だ。
悟さんの生活環境が一変したのは2015年のことだった。買い物に行った際、母親が突然倒れ、救急車で運ばれた。脳出血だった。
1人で母親の介護を担うことに
1カ月入院した後、リハビリを経て退院することはできたが、半身マヒが残り、介護が必要な身となった。悟さんは父親に相談したが「おまえが面倒を見ろ」と一蹴された。2人の弟も協力する様子はない。悟さんは1人で母親の介護を担うことになった。
母親は食事から入浴、排泄(はいせつ)まで日常生活のあらゆる場面で介助を要した。「要介護1」と認定されたが、本人は「面倒だから」と介護サービスの利用を拒否。さらに、身体が思うように動かないいら立ちを悟さんにたびたびぶつけた。
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