「店も厳しいから、少し休んでもらえないか?」
2020年3月、Aさん(69歳)が7年近く勤めてきたレストランはコロナ禍にあえいでいた。勤務日数は3分の1に減らされ、月13万円ほどあった収入は3万円に。休業補償は受けられなかった。
Aさんは現在賃貸住宅に一人暮らし。介護保険料などを引かれた後の年金5万円はほぼ家賃に消える。就労収入がなかったらたちまち生活が立ち行かなくなってしまう。勤務日数を増やせないか職場と交渉しながら、新たに就職活動を始めざるをえなかった。
Aさんは10代の頃から現在まで1人で生計を立ててきた。会社事務員、ピアノ講師、レストランの調理場など、非正規雇用や個人事業主の期間も長かったが、仕事をしていない時期はなかったという。
「まさか自分が、という思い」
「経験がある飲食業を中心に20件以上に履歴書を送りましたが、短時間の仕事すら見つかりません。求人が出ているところに電話しても年齢を言った瞬間に切られたり。年末には就職活動に必要な交通費すら出せなくなりました。1日1食程度で済ませ、日が暮れたら布団に入り、フードバンクでもらったカイロで暖を取るような生活を続けるしかなかった」
そうして約1年を耐えきった後、周囲からの強い勧めで生活保護を受給することに決めた。
「まさか自分が、という思いが強かったです。健康だし、まだまだ働けるのに。でも四六時中お金の心配をしていたときに比べ、生活はもちろん精神的にも楽になりました」
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