特殊清掃現場があぶり出した「孤独死」の二極化 周囲に助けを求められず、こぼれ落ちる人々

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ゴミで埋め尽くされた部屋を清掃する業者
ゴミ屋敷での孤独死はコロナ前から頻発していたが、コロナ以降はさらに深刻なものとなっている(撮影:菅野久美子)
コロナ禍で「孤独死」の現場は二極化した。周囲とのつながりを持っていた人は早期発見されたり、すんでのところで命を取り留めることができた一方、つながりの弱い人は孤立を深め、死後数ヶ月間も放置された。
特集「1億『総孤独』社会」では、あらゆる世代の孤独と孤立に迫った(一覧はこちら)。

孤独死という現象に向き合うようになり7年余りが経つ。特殊清掃のほとんどが孤独死だ。引き受けるのが特殊清掃業者である。

週刊東洋経済 2022/11/26号
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私は彼らの現場に密着し、その過酷極まりない作業を時に手伝いながら、日本社会が抱える孤独という病巣を見つめてきた。

孤独死は日本社会を映す鏡だ。私たちの社会が急速に無縁社会へと突き進んでいることを如実に表している。もちろん、家で1人で亡くなることが悪いわけではない。在宅死は、私自身を含め一人暮らしなら誰にでも起こりうる。問題は、そのもっと手前にある「社会的孤立」である。今、特殊清掃の現場に感じるのが、深刻な二極化だ。

コロナ禍になり、遺体発見までの日数が増えた。コロナ前だと、数日や数週間で見つかっていた遺体だが、数カ月は放置されたとみられる案件に遭遇することが多くなったのだ。

コロナで露呈した「社会的孤立」

一方、数日で遺体が見つかったり、すんでのところで命を取り留めるケースも増えている。コロナをきっかけに家族や親族が連絡を密に取り合うようになったからだ。つながりを持つ強者はSNSなどを駆使してより関係を深めた反面、コミュニケーションからあぶれた弱者はさらに孤立し、捨て置かれる。コロナは、日本の抱える「社会的孤立」をより残酷な形で浮き彫りにした。

孤独死の多くを占めるのはセルフネグレクトだ。自己放任とも呼ばれ、自分で自分の身の回りの世話ができなくなることを指す。医療の拒否や、ゴミ屋敷化、過剰な数のペットの飼育などが挙げられ、緩やかな自死ともいわれる。その背景に感じるのは、孤独である。

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