「地縁血縁」から解放された日本の残酷な結果 自由恋愛や友情に熱狂できた時代は終わった

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早稲田大学文化構想学部教授 石田光規氏
石田光規(いしだ・みつのり)/早稲田大学 文化構想学部教授(社会学)。1973年生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科社会学専攻博士課程単位取得退学。大妻女子大学准教授を経て現職。主な著書に『孤立の社会学──無縁社会の処方箋』(記者撮影)。
戦後、ネガティブに語られてきた「血縁、地縁、会社縁」。だが、そこから「解放」されたことで孤独に陥る人もいる。内閣官房孤独・孤立対策担当室の有識者会議メンバー、石田光規氏に聞いた。
一人暮らし世帯が4割に迫ろうとする今、頼れる人はいない孤立状態に誰もが陥りうる。特集「1億『総孤独』社会」の一覧はこちら

──コロナ禍で孤独・孤立に陥る人が増えました。

不要不急の面会や会食は控えよといわれ、人々は「それでも会うべき人」と「とくに会う必要のない人」を選別した。つまり「人間関係の棚卸し」を実行した。

会うべき人として選ばれた人もいれば、選ばれなかった人もいる。孤独感にさいなまれる人が続出するのはある意味で当然だ。

ただ、コロナ禍は人間関係の希薄さを表出させたといったほうが正しく、それ以前から孤独・孤立問題は深刻化していた。

「解放」と「剥奪」の2つの文脈

──NHKスペシャル「無縁社会〜“無縁死”3万2千人の衝撃」が放送され、身寄り頼りなく孤独死していく人の急増ぶりが脚光を浴びたのは2010年でした。

いかにも無残な時代が到来したかのように報じられたが、「一人」という言葉には「解放」と「剥奪」の2つの文脈があることを、まず押さえておく必要がある。

血縁、地縁、会社縁といった伝統的紐帯(ちゅうたい)からの解放は、戦後日本の目標の1つだった。しがらみから逃れるために、一人になれる社会を志向した時代もあったのだ。

血縁からの解放は、人々、とくに家父長制的な空間で「ケアの役割」を強いられていた女性を解き放った面がある。

地縁からの解放は、農村の閉鎖的な空間を「民主化」という名目で破壊し、人々が自由に生きられるようになったとされた。

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