──コロナ禍で孤独・孤立に陥る人が増えました。
不要不急の面会や会食は控えよといわれ、人々は「それでも会うべき人」と「とくに会う必要のない人」を選別した。つまり「人間関係の棚卸し」を実行した。
会うべき人として選ばれた人もいれば、選ばれなかった人もいる。孤独感にさいなまれる人が続出するのはある意味で当然だ。
ただ、コロナ禍は人間関係の希薄さを表出させたといったほうが正しく、それ以前から孤独・孤立問題は深刻化していた。
「解放」と「剥奪」の2つの文脈
──NHKスペシャル「無縁社会〜“無縁死”3万2千人の衝撃」が放送され、身寄り頼りなく孤独死していく人の急増ぶりが脚光を浴びたのは2010年でした。
いかにも無残な時代が到来したかのように報じられたが、「一人」という言葉には「解放」と「剥奪」の2つの文脈があることを、まず押さえておく必要がある。
血縁、地縁、会社縁といった伝統的紐帯(ちゅうたい)からの解放は、戦後日本の目標の1つだった。しがらみから逃れるために、一人になれる社会を志向した時代もあったのだ。
血縁からの解放は、人々、とくに家父長制的な空間で「ケアの役割」を強いられていた女性を解き放った面がある。
地縁からの解放は、農村の閉鎖的な空間を「民主化」という名目で破壊し、人々が自由に生きられるようになったとされた。
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