「地縁血縁」から解放された日本の残酷な結果 自由恋愛や友情に熱狂できた時代は終わった

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会社縁からの解放は、経済成長時代に「24時間戦えますか」とテレビCMにあおられながら生きていた企業戦士たちに「人間らしい」生活をもたらすことが必要だという文脈の中で叫ばれた。

伝統的紐帯からの解放の流れは、人間関係の形が変わっていく過程でもあった。

わかりやすい例が恋愛と友情だ。

「自由恋愛」という新しい風

──人間関係作りが自由になった。

1980年代前半まで恋愛と結婚はほぼイコールで、誰かと付き合うことは結婚を前提としていた。

そこへ吹き込んだのが「自由恋愛」という新しい風だ。1980年代後半から1990年代前半にかけ、テレビでは恋愛をモチーフにしたトレンディードラマが大流行した。

真の友達や友情という考え方が広がったのも1980年代以降。町内会長や会社の上司といった付き合わざるをえない関係性から解放された人々は、心から信頼できる友達を自ら選べるようになった。『週刊少年ジャンプ』が空前の部数を出し始めたのは1980年代以降のことで、マンガのテーマとなるのは「友情、努力、勝利」だった。

80年代という時代は、血縁、地縁、会社縁からの解放が楽観的に語れる時代だったといっていい。

──楽観的には語れなくなったと。

風向きは変わった。バブルが崩壊すると、楽観的な空気は影を潜めた。非正規雇用が増えて格差は拡大。結婚したくてもできない層が膨らんだ。男女ともに生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚したことがない人の割合)が5%を初めて超えたのは1990年代だ。

経済成長モデルの負の側面が凝縮されている団地(写真はイメージ、記者撮影)

千葉県松戸市の常盤平団地で、一人暮らしの59歳男性が白骨化した遺体で見つかるという衝撃的なニュースが流れたのは2001年だった。同団地では翌2002年にも50代男性が、こたつに入ったまま亡くなった状態で発見され、「孤独死」が大きくクローズアップされた。

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