貧困に喘ぐ「単身女性」が助けを求められない訳 生き生きと活躍する彼女たちと何もない自分

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NPO法人くにたち夢ファームJikka代表 遠藤良子氏
遠藤良子(えんどう・よしこ)/NPO法人くにたち夢ファームJikka代表。Jikkaでは生活困窮やDVなどにより行き場を失った女性に対する居住、就労などのパーソナルサポートを実施するほか、電話相談、居場所スペースの運営などを行っている。
全世代で最も貧困率が高いのは65歳以上の高齢単身女性。シングルマザーや若年女性への支援が進む中、子どもがいない中高年女性への支援の手は乏しく、助けを求めることすらできないでいる。(本編は「子がいない『中高年単身女性』の知られざる貧困」

東京都国立市で生活困窮、DV被害など、さまざまな事情により家を出た女性のためのシェルターを運営するなどの活動を行う「くにたち夢ファームJikka」。コロナ禍以降、相談は急増している。最近では未成年や精神障害など婦人保護施設などでは扱うことが難しいケースを受け入れることが増えているという。

代表の遠藤良子さんに、なぜ単身女性たちは助けを求めず、孤立してしまいがちなのかについて話を聞いた。

「助けて」と言わない根本にはジェンダー問題があると思っています。女性には自分を優先することに罪悪感を持つ人が多い。DVから逃げるときも「子どものために」と決断する。「私が」ではないんです。「女は自己主張するな」「譲って当たり前」と育てられたせいか、自分さえ我慢すればとギリギリまで助けを求めない。

相談に来た人にこの先どうしたいのか尋ねると「どうするのが正解ですか?」と聞いてくる人がいる。いつも周り優先で自分がどうしたいか考えたことがないというのです。だから自分の意思を最優先にしていいのだと伝えます。「こんなことをしゃべってもいいんだ」「誰かに頼ってもいいんだ」と思うところから始め、「自分には価値があるのだ」という感覚を取り戻していくのです。

自分を責める単身女性

単身女性が助けを求めにくい背景には、家庭と仕事を両立させて働く女性たちの存在もあるでしょう。生き生きと活躍する彼女たちと何もない自分。ほかの女性にできることがなぜできないのかと自分を責めています。だから助けてもらうことはできないと感じている。でもそれは違う。貧困や困難に直面したとき、自分が悪いと思わないで堂々と助けを求めていいのです。

昔、DV被害は家庭内の問題として隠され、警察もほとんど取り合わなかった。でもDV防止法ができたことで、問題が社会化され、人々の意識が変わり、当事者の自己責任から社会が取り組むべき課題へと変わっていったのです。

2022年5月に困難女性支援法が成立し、これまでDV被害者中心だった支援があらゆる立場の女性へと広げられていきます。女性を“かわいそうな存在”として施設などに囲い込むのではなく、その人が何を望むのか、一人ひとりの意思を最優先に、地域の中で生きていけるようになることを願っています。

飯島 裕子 ノンフィクションライター

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いいじま・ゆうこ

ノンフィクションライター・大学講師。貧困問題、労働問題を中心に執筆。著書に『ルポ 貧困女子』『ルポ 若者ホームレス』。近著に『ルポ コロナ禍で追いつめられる女性たち』。

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