特殊清掃現場があぶり出した「孤独死」の二極化 周囲に助けを求められず、こぼれ落ちる人々

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都内の築50年の風呂なしアパートでは、コロナ禍によって社会との唯一の接点を失った男性の孤独死の現場に立ち会うこととなった。灼熱の暑さの中、男性は布団の中で、こと切れていた。

「これは1カ月どころじゃない。数カ月は放置されているな」

特殊清掃業者は現場を見るなり、そうつぶやいた。男性は病気で体を悪くしてから、生活保護を受給していた。清掃の途中で業者は、「新型コロナのため、訪問は当分控えさせていただきます」という福祉関係者のメモ書きを見つけていた。男性は福祉関係者以外、人とのつながりは皆無だったようだ。メモは、コロナ禍になり男性と外界とをつなぐたった1つの糸が、プツリと断たれたことを示していた。

セルフネグレクトでも深刻なのが、ゴミ屋敷だ。夏場のゴミは熱を持ち、室内はすさまじい高温となり、命さえも奪う。真夏に訪れた関東某所の4LDKマンションには、天井に届くほどのゴミがあった。女性は自らがため込んだゴミにつまずき、長期間放置され、命尽きた。高齢者の場合、室内での転倒は頻繁に起こりうる。転倒は、とくに人とのつながりが少なく発見が遅れると、命取りとなる。

長期間放置される遺体

私が女性の部屋で衝撃を受けたのは、部屋の真ん中で無残に傾いた巨大な食器棚だ。成人男性の背丈ほどある食器棚は大きく傾き、今にも倒れそうになっている。東日本大震災の爪痕だった。管理人によると、女性は子どもとは疎遠で、近隣住民との付き合いもほとんどなかった。だから地震で傾いた棚を元に戻すことができなかったのだろう。女性はこの危険な部屋で生活していた。時が経ち、棚の周りはゴミで埋め尽くされた。傾いた棚は、生前の女性の孤立を象徴していた。

神奈川県の瀟洒(しょうしゃ)な分譲マンションで落命した70代男性の部屋も、孤立を感じるものだった。広々とした4LDKの室内は真っ暗でとにかく息苦しい。電気をつけると、その理由がわかった。男性は窓という窓、穴という穴に目張りをしていたのだ。まるで外界を遮断し、はねつけるかのように──。

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