特殊清掃現場があぶり出した「孤独死」の二極化 周囲に助けを求められず、こぼれ落ちる人々

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孤独死の現場では最後まで遺族が現れないこともある(写真左)。遺体の発見が遅れると体液が床の奥に浸透し、作業工程も増える(写真右)(画像:武蔵シンクタンク)

コロナ禍で二極化が進み、孤独死の現場はより一層過酷になった。長期間放置されればされるほど部屋は激しく損傷し、ウジやハエが大量発生して、清掃費用もかさむ。作業に当たる方も感染症などの危険から、全身防護服に身を包み防毒マスクをかぶるなど、万全の態勢で挑まなければならなくなる。

凄惨な死の現場から社会を見上げると、日本を取り巻く孤立の問題は、より深まるばかりに思える。

大切な何かを物語っている

特殊清掃業者の献身的な仕事によって、部屋は確かに元どおりとなる。しかし私は、キレイになった部屋を見て、いつも思う。私たちはこの現実から、いつまでも目を背けていられるだろうか、と。孤立した人々が、ひっそりと息絶え、ひっそりと葬られ続ける社会を、健全な社会といえるのだろうか、と。

私が見つめてきた現場には、時に自己責任という言葉に縛られ、周囲に助けを求められず、こぼれ落ちた人々の姿があった。それは紛うかたなき日本の暗部である。

壁一枚隔てた向こう側にある孤立、そしてその先にある死は、いつ私やあなたが当事者になってもおかしくない現実を突きつけている。そして私たちが置き去りにした、大切な何かを物語っている。

菅野 久美子 ノンフィクション作家

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かんの・くみこ / Kumiko Kanno

1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。出版社で編集者を経て、2005年よりフリーライターに。単著に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)、『孤独死大国』(双葉社)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(KADOKAWA)『母を捨てる』(プレジデント社)など。

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