宗教2世の山上徹也容疑者が抱えた底知れぬ孤独 極端なヒーローの物語が浮上してしまった真因

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山上徹也容疑者のイラスト
( イラスト 岡田航也)
安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者が凶行に走ったのはなぜか。山上容疑者と同じ宗教2世の筆者は、凶行の背後に、宗教2世ゆえの底知れぬ「孤独」があったのではないかと分析する。特集「1億『総孤独』社会」の一覧はこちら

安倍晋三元首相が銃撃され死亡した後、容疑者である山上徹也の属性が報道されるにつれ、私は彼が赤の他人とは思えなくなった。私より1歳年下だが同じ就職氷河期世代で、奈良県で青春時代を過ごしている。そして、宗教2世という共通点があった。

私は天理教信者の両親の下で育ったが、最終的に信仰を拒絶して地元を離れた。天理教はカルト宗教とはされていないが、それでも私は、親からの承認と結び付いた信仰を受け入れざるをえない境遇に随分と悩まされた。「隠れ無神論者」だった私は、信仰共同体という閉ざされた世界の外に飛び出したかった。そこで窒息してしまうことを恐れたのだ。

私の寄る辺なさは県外の大学への進学やパートナーとの出会い、経済的自立によって少しずつ解消されていった。しかし、これはたまたまそうなったにすぎない。

信仰を選んだ母親

山上容疑者は、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に入信した母親の多額の献金によって、運命を狂わされた。さまざまな不幸に見舞われ、拠り所を求めた母親は子どもたちよりも信仰を選んだ。家族ではなく信仰共同体に一身を捧げたのだ。

この事実が彼の人格形成にどれほど大きな影響を与えたかは想像するに余りある。庇護(ひご)者のいない世界で、兄妹をどう守ればいいのか。自殺ですら金を作る現実的な手段に思えるほど追い詰められた。その後、親族の家で暮らすこともかなわず、彼は孤立を深めていく。

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