(第56回)日本は医療について鎖国体制を敷いている

(第56回)日本は医療について鎖国体制を敷いている

高齢者人口が増加する日本では、医療・介護の専門職を確保することが喫緊の課題だ。こうした要請に応えるため2008年から、経済連携協定(EPA)によってインドネシアとフィリピンから看護師を受け入れることとなった。

ところが、母国で資格があっても日本では無資格扱いとされ、日本語で実施される国家試験に合格しなければならない。看護師は上限3年、介護福祉士は上限4年、日本国内で補助的な業務に就き、受験準備をすることになっている。この期間内に合格しなければ、帰国しなければならない。10年2月に行われた看護師国家試験で、最初の合格者が出た。しかし、合格したのはインドネシア人2人とフィリピン人1人だけで、残りの251人は不合格となった。なお、同じ試験を受けた日本人受験者の合格率は約90%だった。

国による医療事情の違いが、看護教育に影響していることは事実だろう。また、言葉の問題があることも否定できない。私自身も経験があるが、医療関係の外国語は特に難しい。

このほかにも問題はあるだろうから、受け入れは決して簡単ではないと思う。しかし、母国で資格があるのに合格率が1%少々というのでは、事実上、外国人に門戸を閉ざしているのと同じである。EPAを結んで形式的には受け入れても、試験で事実上排除してしまうのでは意味がない。「何もやっていないわけではない」という言い訳のためのアリバイづくりと言われてもやむをえない。人手不足が言われながら外国人を排除するのは、いかにも不合理だ。

今後、日本国内の看護師不足はますます深刻化するだろう。しかし、「日本は事実上外国人を受け入れない」と認識されてしまえば、いかに日本との所得格差があっても、日本行きを希望する外国の看護師はいなくなるだろう。その時に困るのは、十分な看護サービスを受けられないわれわれ国民である。今年の試験の結果がどうなるかを注視したい。

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