(第56回)日本は医療について鎖国体制を敷いている


外国人医師の参入をなぜ拒否するのか

TPP(環太平洋経済連携協定)参加に向けて政府が10年11月に作成した「包括的経済連携に関する基本方針」では、海外からの看護師などの受け入れについて11年6月まで基本方針を策定し、「国を開き海外の優れた経営資源を取り込む」ための規制改革については、11年3月までに具体的な方針を決定するとした。また、1月25日に閣議決定された「新成長戦略実現2011」では、医療・介護を含む分野の今年の成長戦略を描き、EPAで来日する外国人の看護師候補者と介護福祉士候補者が受ける国家試験のあり方などについて、6月までに基本的な方針を策定するとした。

ところが、日本医師会の中川俊男副会長は1月26日の会見で、次のような懸念を表明している。(1)外国人医師の受け入れにも拡大する可能性がある。(2)海外の経営資源取り込みによって、外資による病院経営が行われる懸念がある。(3)日本の医療に市場原理主義が持ち込まれ、最終的には国民皆保険の崩壊につながりかねない。(4)クロスライセンス(互いの国の医師免許を認めること)については、教育水準の違いから日本の医療水準の低下が懸念される。

要するに「外国人医師の受け入れなど論外。医師や病院経営については鎖国を貫く」ということである。

国際医療交流の推進については、政府の「新成長戦略」の一環として、外国人医師が日本で医療知識や技能を学ぶ「臨床修練制度」が設けられている。この制度によれば、日本の医師免許を持たない外国人医師が最長2年間、指定医療機関の指導医の下で医療行為ができる。

ただ、許可を得るには多くの証明書が必要だ。しかも手続きは煩雑で、審査手続きに2カ月もかかる。このため来日する外国人医師数は年間40~50人程度でしかなかった。「新成長戦略実現2011」では、臨床修練制度を利用しやすくする規制緩和を4月までに実施することとした(一部の提出書類を不要とする、母国の医師免許証についてコピー提出を認める、来日から1週間程度で許可を出せるようにする、など)。

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