これまで日本が受け入れてきたのは単純労働者が中心で、知識労働者、専門家、幹部候補生ではない。前回述べた事情(中国では大学卒業者が過剰)を考えれば、今なすべきことは、単純労働者よりは知識労働者の受け入れだ。
では、どんな専門分野の人材が考えられるだろうか? もちろん企業によって需要はさまざまだが、いくつかのことは言える。
「これからは中国市場だから、そのために中国の人材を雇う」という発想はしないほうがよい。つまり中国人だからといって中国ビジネスに限定しないほうがよい。実際、採用した中国人に中国ビジネスを担当させたところ、「もっと広い仕事がやりたい」と言って、辞められてしまったケースもある。外国人のローカル採用は今までもあったはずだ。
専門家の採用はもっと広い観点から考え、即戦力を求めないほうがよい。それよりは企画力や発想力を求めるべきだ。日本企業に足りない部分を補ってもらい、可能性を広げる、という発想が必要だ。
中国人人材の利点は何か。まずどのような分野であれ、英語力に期待できる。日本人が最も弱いのはこの分野だ。しかも、ゆとり教育のため、若い世代の日本人はわれわれの世代の半分くらいの時間しか英語の勉強をしておらず、英語力が著しく低下している。しかも、最近の若者は親元から離れたがらないという傾向もある。スタンフォード大学の留学生数でも、中国人留学生は日本人留学生の8倍近くいる。これは日本人の英語能力が低く、また外国で学ぼうとする意欲が失われていることを示している。
日本の企業が国際化できない大きな原因は、こうした内向き志向の強まりにある。英語力は、日本企業が水平分業を実現するためにも必要だ。中国人従業員を接点として活用できれば、オンラインで中国の単純労働力や英語を話せない人材を使うこともできるだろう。
こうした事業展開によって大きな利益を得られるのは中小企業だ。高い技術力を持つ中小企業であれば、これまでの系列関係からは離れ、世界的な広がりを持つ水平分業のネットワークに参画することができるだろう。