(第55回)専門家に場を提供し国を栄えさせよう

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 先端金融も日本が遅れている分野だ。この分野で中国の教育が格別優れているわけではないが、中国人の英語能力に期待できる面が多い。グローバルな投資銀行業務には、英語力がどうしても必要になる。野村ホールディングスがリーマンブラザーズの人材を引き受けたのも、そうした事情があったからだ。日本の金融機関が発展するには、国内の営業に限定されず、グローバルな事業展開を行うことが必要だ。中国やインドの人材は、そうした目的のために重要な役割を果たし得る。

シリコンバレーの外国人比率は60%

中国の大学教育が強いのは、科学技術の分野である。もちろん理工系の教育は日本も強い。特に機械工学、電気・電子工学、化学などの伝統的な工学分野はそうだ。しかし、コンピュータサイエンスなどのソフトウエアでは、日本の大学の教育体制は弱い。特にIT関連が極めて弱いのだ。日本のシステムエンジニアの多くは、大学で専門的な教育を受けていない。

アメリカでは、この分野は外国人に支えられている。「シリコンバレーは、インド人と中国人が作っている」と昔から言われてきた。2000年時点ですでに、シリコンバレーの科学技術分野での外国生まれ人材の比率は50%になっていた。08年では、60%になっている(グラフ参照)。日本における外国人労働者の比率が0・3%でしかないのと比較すると、あまりの違いに言葉を失う。この7割が、中国人とインド人だ。清華大学の卒業生だけで約4000人がこの地域に居住していると言われる。

インターネット用のルーターのメーカーであるシスコシステムズの本社はカリフォルニア州サンノゼにあるが、近くの通りを歩いているのは、ほとんどインド人だ。一瞬、インドの町ではないかという錯覚にとらわれる。日本ではおよそ見られない光景だ。オンラインアウトソーシングによる活用まで含めれば、シリコンバレーにおけるインド人の比重は極めて高い。

つまりシリコンバレーとは、さまざまな国からの人材が集まる「場」なのである。それらの人々の相互接触のなかからIT産業という新しい産業が生まれたのだ。


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