「部下が離れる上司」がやっている残念な言葉遣い 悪い情報を部下へ伝えるときどう語りかける?

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さらに例を挙げてみましょう。

△ 「コロナ禍に戦乱、そしてインフレの進行に世界中が苦しめられています……。しかし、こうしたときこそ、イノベーションは起こりやすいものです」
△ 「不確実な時代だからこそ、確実に信頼いただける企業として、一歩一歩着実に歩んでいきたい……」

これらは穏当なようですが、受け身で伝えているためにすべてを傍観しているような、他人事として話しているような印象を与えかねません。聞く側も同様で、まるでテレビで評論家の話を聞き流しているような感覚になり、当事者意識が生まれません。

◯ 「コロナ禍に戦乱、そしてインフレの進行で、私たちは苦しんでいます。しかし、こうしたときこそ、あなたの力でイノベーションを起こすチャンスともいえます!」
◯ 「不確実な時代だからこそ、私たちは確実な信頼を獲得する企業であり続ける。そのためにあなたが今できることを一歩一歩着実に進めていきましょう!」

「私たち」「あなた」という主語を入れて、受動態を能動態に変えてみました。話し手から他人事が抜け、聞いている側にとっても自分事となり、「では、自分は何をしなければならないのか?」を考え始めます。

「〜させていただきます」を乱用はNG!

リーダーが話す以上、話の内容を受け入れるべきか、行動するべきかを相手にゆだねてはいけません。話の内容を「受け入れさせ」て、「行動をおこさせる」。能動態にすることによってそれが可能になります。価値判断の主体は話し手であるリーダー自身です。もちろん同時に、能動態で伝えるため、発言内容には責任も伴います。

これは、経営者など肩書きとしてのリーダーに限った話ではありません。会議や打ち合わせの進行担当、現場の仕切り役を任された人など、その場において実質的にリーダーの役割を担う方は、積極的に能動態で話すべきです。上席者や先輩を過剰に気づかい、受動態ばかり使っていると、やがて会議や現場そのものが現在位置を見失い、混乱してきます。

受動態の多用とよく似たものに、過剰に丁寧な言い回しの多用があります。もしあなたに「〜させていただきます」を乱用する話し癖があるのであれば、すぐに修正するべきです。

× 「一言、ご挨拶を申し上げさせていただきます」
◯ 「一言、ご挨拶を申し上げます」

「〜させていただきます」は敬語として使う方が多いのですが、そもそも許可を要していない場面では使う必要はありません。「ご挨拶を申し上げます」で、何ら失礼はありません。すっきりと言い切ることで、自信を持って語り出そうとしている印象が強まります。

次ページ「主語は必ず自分。能動態で、シンプルに言い切る」
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