「匠」を目指す心構えは、仕事に取り組むスタンスとして重要なものですが、そもそも私たちの仕事の多くは、匠的に集中してひとつのことを突き詰めるようなものではありません。サラリーマンは、費用対効果も考えながら、複数の仕事を進めなければならないからです。
「要領がいい」というのは、まさしくこのバランスを見極めることなのです。私たちは、この匠の世界のよさを理解しつつも、複数の仕事の間でメリハリをつけて、要領よくまずまずの合格点をとることを考えなければならないのです。匠は心構え、実践は費用対効果、というバランスこそが必要で、これが「要領よく働く」ということなのです。
「要領がいい人」が出世するのは当たり前
これまで企業全体の話をしてきましたが、もちろん「要領のよさ」は、サラリーマン個人も身に付けておかなければならない能力にほかなりません。それができる人こそが、管理職になり、出世していくのです。
たとえば、あなたが上司だったとしましょう。大口顧客の要望を適切に処理し、社内外でうまく立ち回って効率よく利害調整ができる部下とできない部下、どちらを出世させたいと思いますか?
今度は逆に、あなたが部下だったと考えてください。関連部署の間でうまく立ち回り、さまざまな利害関係を処理して、残業なんかさほどしなくても、あなたが出したアイデアや提案を実現してくれる上司とそうでない上司、どちらの下で働きたいですか?
答えは、明らかなはずです。このように「要領がいい」ことは、出世するためにも絶対必要な能力なのです。
また、そういう人は時間的にも余裕ができ、プライベートでの生活も充実しています。これを逆に考えると、もしあなたが今、仕事が楽しくない、プライベートが充実していない、と感じているなら、きっとあなたは「要領の悪い」働き方をしていることになります。
要領よく仕事をすることは、自分だけでなく、部下や同僚、そして上司にまでも、余裕を与える、重要なことだということです。
では、要領のよさを身に付けるために必要なものは何でしょうか? この連載で順にご説明しますが、要約していうと次のようなものです。
① 上司の上司、経営者の視点で考え、会社という生き物をしっかりと理解している
② 謙虚に上司や部下のよいところを見ようとし、他部門にも入り込もうとしている
③ 一般的なこと、自分の常識も疑い、つねにアンテナを張り能力を高め、生活水準を整えている
これらの詳細は、次回以降の連載にご期待いただければと思います。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら