「要領がいい」というのは、むしろプラス面でとらえるべきです。「要領がいい」を『広辞苑』で調べますと、「物事をうまく処理する手順やこつ」(『広辞苑』第六版)とあります。ですから、要領のよさというのは、成果を出すのに必須のものです。
しっかりと優先順位をつけ、ポイントを押さえ効率よく仕事をし、高い成果を上げる――一言で言えば、「要領がいい」人は、仕事における費用対効果が高いのです。これは企業が生き残るためにも不可欠なものでしょう。
ちなみに、私は長いこと外資系企業で人事責任者を務めてきましたが、外資系企業では、「要領がいい」ことのマイナスイメージはほとんどありません。むしろ、多くの人がいかに「要領よく」働くかを工夫しています。彼らの働き方は、新刊『元・外資系人事部長が見た 要領よく出世する人』に詳しく書きましたので、興味のある方はそちらを参考にしてください。
なぜ日本の労働生産性は、ここまで低いのか?
さて、ここでは、マクロの視点から、日本人がいかに「要領が悪い」働き方をしているのかを見てみましょう。1990年のバブル全盛の頃、日本は、「政治は三流だが経済は一流」とよく言われたものですが、最近は、経済もなかなか厳しい状況です。
OECD各国の労働時間当たりのGDPを比較すると、いかに日本の生産性が低いかがわかります。日本の労働生産性は米国のおよそ6割程度で、なんと「PIIGS」などと言われたイタリアやスペインよりも低いのです。
さらに国連の「幸福度調査」を見てみると、日本はなんと43位。これはやはり、労働生産性の低さと無関係とは言えないでしょう。
ではなぜ、日本の生産性はこんなに低いのでしょうか。
その理由を解説するために、私の個人的な経験をご紹介しましょう。まだ社外とのメールがそれほど頻繁でなかった頃、取引先に電話したところ、話したい相手はあいにく不在でした。なら伝言だけ……と思ったのもつかの間、いきなり彼の上司の担当部長が電話口に出てきました。担当部長は、「いつもお世話になっております。〇〇は、今は席を外しておりまして、伝言をお承りします」と……。
先方の部長が出たからには、こちらは用件だけで済ませたくても、伝える内容の背景説明に加えて、時候のあいさつのひとつもしなければならず、面倒くさいわけです。もしこれが留守番電話でもあれば、たとえば「〇〇さん、先日お話ししていた件、火曜の15時にできるのでよろしく」のメッセージで済むのに。
もちろん、取引先の方々とコミュニケーションを取ることは価値のあるものですが、これはちょっと、やりすぎではないでしょうか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら