多くの人が足早に行きかう、都心の地下街。こんな通路を目が見えないで歩くって、こわくはないか。そもそもどうやって私の記事を読んで、メッセージをくれたのだろう。
待ち合わせ場所に向かう間、聞いてみたいことが次々と頭に浮かんでくる。ソラさん(仮名・40代)は、親のネグレクトで祖父に育てられ、小学校から高校までは児童養護施設から盲学校(現・特別支援学校)に通った過去を持つ。
いたいた、向こうのほうに盲導犬を連れた、すらりとした女の人が立っている。事前に予約していたカフェに入ると、ソラさんは窓のほうに軽く顔を向け、「明るいですね」と言った。
片目は弱視で、暗いところでなければ少し見えるのだという。盲導犬は、さっそくテーブルの下にゆるりと寝そべっている 。
ソラさんと私は、フルーツサンドとコーヒーを注文して、取材を始めた。
お米の袋で雨ガッパを作ってくれた祖父
マルファン症候群、と診断されたのは、5歳のときだった。ソラさんの目がかなり見えづらいようだと気づいた保育園のすすめで、検査入院をしてわかった。マルファン症候群は指定難病のひとつで、骨格や目、心臓、血管などに症状が出るとされるが、症状の有無や出方は人によって異なる。
この連載の記事は、スマホで文字と背景の白黒を反転させ、ルーペで読んでくれたという。長い文章は読み上げ機能で聞き、書くときはもっぱらスマホを使うそうだ。
幼少期は、父方の祖父とふたり暮らしだった。はじめは祖父を「お父さん」だと思っていたが、保育園に通ううち自然と「うちにいるのは、やっぱりおじいちゃんだ」と理解した。
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