また、これは都合のいいときだけという気もするが、日本では「和を以て貴しとなす」ために、問題の白黒ははっきりさせずに、韓国とは逆に「水に流す」文化が強い。
明治維新に成功したのも、地方の大名や天皇制の存在で政権交代が可能であったという背景も大きいが、時代が変われば過去は水に流して現実に適応することができたからということも一因であろう。
「長いものに巻かれよ」「勝てば官軍」が日本の伝統文化?
また、太平洋戦争では「鬼畜米英」と憎悪を募らせながら戦っていたのに、敗戦したとたんアメリカの忠実な「パートナー」となり、その後も超親米路線がずっと続いている。
天皇が無条件降伏を告げれば、民衆も従う。GHQの軍政に対して、義兵闘争(朝鮮王朝末期、日本に対して朝鮮全土で起こった、数千回を数える民衆蜂起)みたいなものは日本では起きない。
ここからは「水に流す」のみならず、「長いものには巻かれよ」「勝ち馬に乗れ」「勝てば官軍」という言葉があるように、よくいえば現実主義、悪くいえば過去にこだわらない国民性が見て取れる。
これは結局のところ、平安時代末期から鎌倉時代(とくに承久の乱で後鳥羽上皇を隠岐〈おき〉に配流し、その直系をいったん廃位したとき)以降、700年近くにわたって武家支配が続いたことから、正義や道徳観念の議論ではなく、「最後は力あるモノに従わざるをえない」という現実的判断が染みついているのだろう。
新羅(しらぎ)の時代から、高麗(こうらい)時代の仏教との併存期を挟みつつ1000年以上も儒教が続いた韓国では、道徳的・観念的な大義名分が重視されるが、武士道の国日本はそうではないのだ。
おまけに特徴的なのが、「自発的に切腹することで許される」という独特の「責任観」(あえて、責任感ではなく)が深層にあることである。
この責任観は「死んだら終わり、過去を問わない」という、日本の独特の死生観にもつながっているように思える。
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