難病の子も地域の学校へ…「合理的配慮」って何? 「特別支援」との違いについて専門家が解説する

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京香さんのクラスでは、教壇で授業を進める教員と、生徒に個別対応する教員が連携する「チームティーチング(TT)」を取り入れた。

教員が教科書を読み上げるときは、別の教員が京香さんの横でページの文章にマーカーで線を引いて、本人に示すようにした。この方法は「同じ教科でも、他の先生の授業を見ることはないので、とても参考になった」と、教員の間でも気づきが多く、好評だったという。これで教員全体が京香さんと関わりを持つことができるようになった。

チームティーチングの様子(写真:ご家族提供)※画像は加工しています

こんなふうに、教科ごとに教員らが京香さんも授業に参加できるような工夫をする様子を見ていたことで、生徒もいろいろなアイデアを出し始めた。例えば、大縄跳びでは、京香さんが最初に車いすごと縄をくぐった。その後は京香さんと補助教員がクラス全員で作成した回数カードをめくる役割を担当し、跳んだ回数を数えることになった。

このような学校生活を送りながら、京香さんは体育大会も2泊3日の修学旅行も参加することができた。その都度、教育委員会が予算措置をした。

この間、教員が意識してきたことは「中学生として、みんなと同じ経験をしてほしい」だった。そのメッセージは生徒にも伝わり、教室の壁には、学校生活のさまざまな場面の写真とともに、京香さんの顔写真のそばに「考えるな、感じろ」と、映画『燃えよドラゴン』のブルース・リーのセリフの紙が貼られた。

「事故が起きたら…」の声に

京香さんが入学する前、教員の中には「事故が起きたらどうするんですか」と心配する声も出たという。

京香さんと稲田前校長(写真:ご家族提供)

稲田前校長は教員会議で「学校生活の態勢を整備することは管理職の仕事です。京香さんを受け入れるにあたって、みなさんは何も心配することはありません。これまで通りのやり方で、授業も学校生活も進めてください」と言い切り、率先して京香さんとの時間を作った。緊急時対応の手続きも決めておいた。

「もちろん、やってみることでリスクを抱えます。でも、何がリスクかを見極めること、リスクをマネジメントすることが教員の仕事です」と稲田前校長は言う。

そして、「全国どこの学校でも、このような授業をすべきとは言いませんが」と前置きしたうえで、京香さんと過ごした3年間を「とても楽しかった。高校へもそのように引き継ぎました」と力強く話していた。

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