なぜ「ふかふかの絨毯」は車いすだと困難なのか? 意外なところに社会生活の不便や不自由がある

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川崎駅前で行われた"バリアフル"レストランの様子。「2足歩行」の人は天井にぶつからないよう、ヘルメットをかぶっている(写真:公益財団法人日本ケアフィット共育機構提供)
インクルーシブ(inclusive)とは、「全部ひっくるめる」という意。性別や年齢、障害の有無などが異なる、さまざまな人がありのままで参画できる新たな街づくりや、商品・サービスの開発が注目されています。
そんな「インクルーシブな社会」とはどんな社会でしょうか。医療ジャーナリストで介護福祉士の福原麻希さんが、さまざまな取り組みを行っている人や組織、企業を取材し、その糸口を探っていきます。

3月21日、神奈川県川崎駅前の広場で「バリアフルレストラン」というイベントが開催された。"バリアフリー"ではなく、障壁だらけの"バリアフル"レストランとはどういうことか。

入店すると「車いすユーザーが多数派(マジョリティ)」で、「二足歩行者は少数派(マイノリティ)」という、日常を逆転させた世界が広がる。

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車いすユーザーが多数派の店だから、いすはない。

入口やテーブルなど部屋にある物すべてが車いすの高さに合うように作られているため、二足歩行者は腰をかがめて歩かねばならず、不便なことばかり。店員からは「介助者はいないのですか」と聞かれる。いつのまにか、二足歩行者たちはマイノリティな存在になっていた。

この店を出たとき、あなたは何を思うだろうか?

「社会における障害」とは何かを考える

このイベントは、公益財団法人日本ケアフィット共育機構が「社会における障害とは何かを考えること」を目的に企画・運営し、全国の自治体や企業等と連携しながら開催している。今回で4回目となる。

社会の大半の人は「障害とは足を動かせない、耳が聞こえないなどの心身機能や構造のことで、それが原因で社会生活において不便や困難が起こる」と考えるだろう。この考え方は「障害の個人(医学)モデル」と呼ばれる。

一方、このイベントでは「現代の社会環境(建築物、制度、慣習、考え方など)は障害がない人を中心にデザインされていることが多い。このため、社会の中でさまざまな障壁(バリア)が生じて困っている人がいる。この障壁を障害と呼ぶ」と訴える。こちらは「障害の社会モデル」と呼ばれている。

障害の社会モデルは、1980年代に障害学の分野で提唱され、2006年に国連(国際連合)で採択された障害者権利条約で、「障害の新しい定義」と示された。

日本でも2011年の障害者基本法の改正で盛り込まれた。個々の心身機能や構造が少し違っても、社会環境を工夫することで、人々が社会参加できる機会は飛躍的に増加すると考えられている。

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