今年のアカデミー賞で作品賞を受賞した映画『コーダ あいのうた』の影響で、聾(ろう)者や聾者の文化(以下、聾文化)が注目されている。聾者とは、声でなく手話でコミュニケーションを取る人で、聾文化とともに生活している。
2月、「第41回全国高校生読書体験記コンクール」(公益財団法人一ツ橋文芸教育振興会主催)で応募総数8万3500編あまりの中から、トップの文部科学大臣賞に選ばれた作品も、聾文化を取り上げたものだった。
体験記のタイトルは「聾者は障害者か?」
――タイトルは「聾者は障害者か?」。
この体験記を書いた筑波大学附属聴覚特別支援学校高等部3年生(千葉県)の奥田桂世(けいよ)さん(18歳、受賞当時)は聾者で、タイトルは自分自身のことを含めて表現している。
私は若い人が投げてきた直球の問題提起に大きな衝撃を受け、ぜひこの連載で取り上げたいと思った。
まず、奥田さんの体験記の概要を、文章を抜き書きしながら紹介する(⋆1)。この読書体験記コンクールでは、本の感想文を書くだけでなく、本の内容にどのような影響を受けたかをつづることになっている。
奥田さんは、祖父母も両親も妹も聾者という家庭で育った。乳幼児期から高校まで聾学校に通っていたため、幼少期は音が聞こえる人(以下、聴者)のことを「普通ではない」と思っていたそうだ。
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