3年前、7歳年上の兄を自殺によってなくした
この世が、好きな所や嫌いな所もあるけれど、
基本的には感謝している
生まれてくる事は選べないなら、
死ぬ時期くらい選べたら良いのに
楽しく死ぬ」
都内で塾講師をしているヨウヘイさん(仮名、42歳)は3年前、7歳年上の兄を自殺によってなくした。このつぶやきのような散文詩は、兄が亡くなる5日前に携帯のメモ機能に残したものだ。兄は長い間、統合失調症に苦しんできた。そして、ヨウヘイさん自身は双極性障害である。兄の一生とは、弟の半生とは――。
ヨウヘイさんは4年制大学に進学、新聞社への就職が決まった。ちょうどそのころ、体調に違和感を覚えて初めて精神科を受診したところうつ病と診断された。「精神疾患というレッテルを張られたようでショックでした」と振り返る。会社では営業を担当。上司が舌を巻くほどの成果を上げる一方で突然ひどいうつ状態に陥り、入退院や休職を繰り返した。
体調が悪化するのは、必ずしも季節の変わり目や環境の変化というわけではなかった。あえていうなら自己判断で処方薬の服用を止めてしばらくすると、記憶の混濁を伴うほどのめまいや、金縛りにでも遭ったかのように朝起きられなくなるといった状態に陥った。服薬についてはつい「飲まなくても大丈夫だろう」と考えがちだったという。
結局会社では内勤への異動を命じられた。ヨウヘイさんは「やっぱりみじめな気持ちになりました」と打ち明ける。
自身の心身に起きていることについて知りたくて関連の書籍を読みあさった。あるとき、専門書に書かれていたそう状態の特徴に、思い当たる項目が数多くあることに気が付いた。「自尊心の肥大」や「まずい結果になる可能性が高い快楽的活動に熱中する」などだ。
実際、いいアイデアが浮かんだからと早朝5時に出勤したこともあったし、スロットにのめり込んで300万円近い借金をつくったこともあった。そうした時期は、うつ状態のときとは打って変わって数時間の睡眠でも平気だった。思い返せば大学時代も授業やバイトの掛け持ち、趣味のスポーツ観戦と極端に活動的になる時期もあった。
それらを主治医に伝えたところ、あらためてそう状態とうつ状態を繰り返す双極性障害と診断されたのだという。
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