「時給910円」で働く39歳男性の孤独な戦い 正社員から派遣を経てアルバイト生活

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貧困のスパイラルから抜け出せないという39歳男性
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困の罠に陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。東洋経済オンラインでは女性の貧困に焦点を当てた連載「貧困に喘ぐ女性の現実」を進めているが、言うまでもなく、女性だけが苦しんでいるわけではない。本連載では「ボクらの貧困」にフォーカスしていく。
(編集部)

 

東京都内にあるそば店の厨房で働くタカシさん(39歳、仮名)の1日は、1錠の精神安定剤を飲むことから始まる。

「いろいろ言われたときに、心がかきむしられるような気持ちになるのを抑えるためです」

有給休暇や社会保険、雇用保険がなかったので、指摘すると「うちにはそういう制度はありません」と返された。有休も社会保険も法律で決められた制度だ。「ない」などという答えはありえない。

アルバイトの時給は「1090円」と聞いていたのに、働き始めてから時給に当たるのは「基本給910円」で、残りの180円は「職能業務手当」という手当だと言われた。会社側からはこの手当は時間外割増や深夜割増分に当たると説明されたが、求人に1090円とあれば、時間外や深夜労働をこなした場合は1090円の2割5分増しの賃金が払われると考えるのが自然だ。実際、こちらのほうが収入は多くなる。それに時給910円では、東京都の最低賃金907円と変わらない。求人詐欺と言われても仕方のない手法である。

「休まないのが美徳」という空気

「休まないのが美徳」といった体育会系の空気があり、14日間連続勤務を求められたり、体調が悪いと言っても早退させてもらえなかったりしたこともあった。一方、客足が少ない日は、シフトで決められた勤務の途中でも突然、「帰って」と言われる。退勤後の時給は払われない。会社側は契約書に「勤務時間は1日の所定を6時間、1週の所定を12時間」と書いているから、これを超えさえすれば問題ないと言うが、これでは生活が成り立たない。

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