「時給910円」で働く39歳男性の孤独な戦い 正社員から派遣を経てアルバイト生活

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こうした待遇に意見すると、じわじわと勤務時間を減らされ、「いつ辞めるの?」と迫られた。勤務時間を減らされるのは、時給で働くアルバイトにとって死活問題だ。こうしたやり方は「連続勤務に耐えられない」「意見を言う」アルバイトを退職に追い込むときの常套手段で、仲間内では「経済制裁」と呼ばれている。タカシさんの勤務は現在、週4日、1日10~11時間ほどで落ち着いているが、ほとんどが空欄の真っ白な勤務表を渡されて辞めていったバイトは何人もいる。

店舗が住宅街の中にあり、換気扇による騒音を抑えなければならないため、換気が十分にできない。厨房で揚げ物などを作っていると、時々頭痛がする。一度、警報機が作動し、病院に行ったことがあるが、このときは一酸化炭素中毒と診断された。また、この1年間で2回、肺炎を患った。原因は厨房に繁殖しているカビではないかと思っている。

終日、立ちっぱなしで、重い寸胴を運ぶなど重労働だが、タカシさんの月収は20万円を切る。退職金もボーナスもない。

どこのタコ部屋の話かと思ったが、彼が働くそば店は東京・港区にある高級店である。

豪華な生け花が置かれ、ブルースが流れる店内には、カウンターとテーブル席がある。天せいろが2000円近くして、日本酒はもちろん、ワインや洋酒も豊富。店員は髪を栗色に染めたり、あごひげをたくわえたりと、見栄えのよい若者がそろっている。彼らを見て、タカシさんの髪型がモヒカンだったことにようやく納得がいった。来店客もおしゃれな服装の女性連れやカップルでにぎわっていて、芸能人もよく見かけるという。

タカシさんはこう言って皮肉る。「お客さんはみんなアベノミクスの恩恵を受けている人。カウンターの内側と外側では、人間の住む世界が違います」

新卒で外資系の消費者金融に入社

もともとは正社員だった、というタカシさんは自らの職歴を「斜陽産業ばかり選んできたような気がします」と振り返る。

就職氷河期のさなか、東京農大を卒業、外資系の消費者金融に就職した。最初はローンの切り替えを勧める部署で順調に成績を上げたが、ほどなくして借金の取り立てを担当する部署に異動。法律すれすれの社内マニュアルにのっとって債務者を精神的に追い詰めることが仕事になった。が、中には自殺してしまう債務者もいたという。

「ある日、警察経由で○○さんが公園で縊死(いし)という連絡が来る。それが、僕が前日に訪ねた人だったりするんです。他人の借金の連帯保証人になっただけの年金暮らしのお年寄りもいて、そういう人たちが夢に出てくるようになってからはもうだめでした」

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