「沖縄の貧困」は学歴社会と暴力が生み出した

平均年収は全国最下位、雇用は崩壊状態

沖縄県那覇市松山のキャバクラに勤める里見千穂さん(23歳、仮名)
今回、平均年収全国最下位、離職率全国1位に苦しむ沖縄の貧困問題を考えるルポをお届けする。このルポは「総論」を語るものではなく、あえて「個人」をクローズアップしている。そこから浮かび上がってくる真実があると信じているからだ。われわれは、現実に起きていることから目をそむけてはならない。

 

「子供は4歳の娘、虐待をやめられない。普通に殴ったり、蹴ったりしちゃう。まずいと思うけど、どうにもならない。やめられないです。放置して遊びに行くのは日常だし、ヒドイときは髪の毛引っ張って、引きずり回してひっぱたくとか。子供は、ギャーって泣くよね。でもね、どうしてもかわいそうに見えないの。虐待しちゃうときは、“こいつがいるから、どうしてこいつのために、私が……”って思考回路になっているからさ」

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出勤前に取材に応じてくれたキャバクラに勤める里見千穂さん(23歳、仮名)は、顔色ひとつ変えずに娘に対する虐待を語る。彼女は4歳の娘と暮らすシングルマザー。学歴は高校中退、18歳で出来ちゃった結婚し、3年前に無職で収入のない旦那と離婚している。

沖縄県那覇市松山は、沖縄県最大の歓楽街だ。300メートル四方の一角にキャバクラや風俗店が密集する。ゆいモノレール・美栄橋駅を降り、国道58号を越えるとネオンの明かりが見える。路上から男性キャッチが続々と現れ、ひっきりなしに声をかけられる。沖縄の夜は長い、連日朝方までネオンが消えることはない。

平均年収は全国最下位、雇用は崩壊状態

沖縄県の経済は、本当に厳しい。県民の平均年収は333万円(平成25年賃金構造基本統計調査)、平均月収は23.75万円(勤続9年、平均40.5歳)で、全国最下位であり、第1位の東京都580万円と比べると57%強の収入しかない。戦後復興や高度経済成長から切り離され、基地や公共事業への依存から抜けだせないことが理由と言われる。

全国最下位なのは、年収だけではない。県内の非正規雇用者は44.5%(沖縄県庁ホームページ)、離職率は極めて高く、大卒3年内離職49%、高卒3年以内になると57.4%と、雇用は崩壊状態だ。さらに最低賃金は693円と全国最低の一方で、公務員の平均月収は40万7000円と高く、公民の深刻な格差も抱えている。沖縄の子供たちは公務員にあこがれ、公務員になることを夢見る。シングルマザーも多い。離婚率は人口1000人に対して2.59組が離婚(2013年)と断トツの全国1位で、児童の半数以上がシングル家庭という小学校も存在する。沖縄には、本土都市部住民の想像を超える貧困が蔓延しているのだ。

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