シャケを万引きした35歳主婦が抱える苦悩

PTA役員も務める真面目母に何があったのか

PTA役員も務める真面目な母親が、なぜ万引きに手をそめたのか?
東洋経済オンラインでは、風俗業界やアダルトビデオ業界で働く女性を取材し続けてきた中村淳彦氏のルポルタージュを連載していく。ここで取り扱うのは「総論」ではなく「個人の物語」。具体的な物語から浮かび上がる真実があると考えているからだ。ぜひ、日本の貧困問題について思考を巡らす契機としてほしい。

 

「奥さん、今回は普通の生活に戻れるから。明日からまじめに生活してくださいね。旦那さんに言うか、言わないかはあなた次第だから。生活が苦しいのはわかるけど、犯罪に手をそめるのは絶対にダメだよ。みんな、苦しい中で頑張っているんだから」

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5月中旬の平日。人通りは少なく、一歩外に出れば暗闇が広がる夜9時半。北関東のある街の警察署の待合所にいる。取調室から出てきた鈴木百合さん(35歳、仮名)は、厳しい表情の警察官にそう諭された。私は身元引受人として突然本人に呼ばれ、到着して1時間後に彼女を引き渡された。「勤務先の上司」と説明した。彼女は涙目で、「ご迷惑をおかけしました」と警察官に頭を下げる。

今から7時間前、午後2時半ごろに彼女は市内最大のショッピングモールの食品売り場で万引きをして捕まった。私の携帯に連絡があって「お久しぶりです。実は……今、万引きして捕まっちゃいました。本当にお手数なのですが、身元引受人として来てもらえないでしょうか。誰も頼れる人がいないのです。お願いします」と頼まれた。高速道路に乗り、言われた警察署に駆け付けた。東京から車で1時間半~2時間ほど、最寄り出口を降りてからは延々と田園風景が広がった。

小学校のPTA役員を務める母親

鈴木さんは2人の子供を育てるお母さんだ。典型的な田舎の地味な主婦といった風貌で、1年前から地元小学校のPTA役員を務める。日々、家事と子育て、パート、PTA活動に追われる日常を送る。誰が眺めても、窃盗という犯罪に手をそめるような女性には見えない。

警察署を出て車に乗った。彼女は助手席に座った。5分ほど走って国道に出ると、気持ちが落ち着いたのか話し始める。

「盗ったのは、食料品です。午前中に入院する姑のお見舞いに行って、その帰り。夕方からPTAの会合があって、ちょっと時間が空いたの。病院の近くのショッピングモールで夕飯の材料を買って帰ろうとして、そこで万引きして捕まっちゃいました」

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