私は冗談半分で「熟女風俗は単価が高いし、時間の融通が利く」と伝えた。そうするとその日のうちに血眼になってインターネットで高額求人を探し、彼女は風俗店ではなく、素人熟女AVに出演してしまった。その後、旦那に秘密のまま、目先のおカネに困ってAV出演を数回繰り返す。結局、AV出演で得たおカネは、3本出演で10万円程度だった。
カメラの前で裸になって、目先の支払いを切り抜けながら弁護士に依頼して債務整理をする。「弁護士先生に利子を止めてもらって、なんとか返済します」とメッセージをもらったところで、連絡は途絶えた。そして5年後、今日の万引き事件だ。彼女の小さな人間関係の中で、万引きがバレても問題なかったのは、たまたま電話番号を知る私しかいなかった、という事情だった。
「5年前はもうノンバンクでおカネを借りることができなくなって、月末の車のローンが間近だった。延滞しちゃうと、ディーラーに旦那の車がとられちゃう。そう焦って。結局、AVに出ちゃった。AVでなんとか目先のおカネを作って、姑に子供を見てもらうことにして地元の野菜即売所のバイトを始めました。債務整理で借金が80万円くらいに減って、毎月3万円の返済。それは、旦那にバレないでなんとかなりました」
鈴木さんと会うのは、今日で3度目だ。本当に地味でまじめな田舎女性で、風俗はもちろん、万引きをするようなイメージはない。熟女AVや風俗の仕事は、私が伝えたことで初めて知ったようだった。「さすがにカラダを売る選択はありえない、リスクが高すぎる」と言ったが、目先の数万円の支払いのために決断してしまった。
学生時代は道をそれるような経験はない。初めての恋人は19歳のときに専門学校の同級生。2人目が社会人になって知り合った現在の旦那だ。経験2人で結婚して、AV出演以外に、浮気や遊びは1度もしたことがない。男性経験の3人目はAV撮影現場で登場した男優だ。
食費しか切り詰める出費がなかった
「本当に生活は苦しいです。ギリギリです。万引きしちゃったのは、食費しか切り詰めるものがなかったから」
ため息をつきながら、そう言う。旦那の実家暮らしで家賃はなく、世帯収入は県の平均に近い。旦那は年収400万円、彼女はパートで年収80万円程度を稼ぐ。世帯収入480万円は決して貧困ではなく、一般的な家庭といえる。
「おかしくなったのは3年前、義父ががんになって入院してから。胃がんが再発して、抗がん剤治療をしたのでおカネがかかりました。病院から毎月13万円くらいの請求があって、しばらくしてから高額医療費の制度で3万円くらいが戻ってくるみたいな感じ。結局、義父が亡くなって、その後すぐに義母もがんになって。今、義母は入院中で抗がん剤治療をしています」
旦那は手取り月24万円、彼女のパート代は月7万円。夫婦で31万円の収入がある。支出は義母と2人の子供を含めた5人分の保険料4万5000円、光熱費2万2000円、食費3万円、旦那の小遣い2万円、ガソリン代2万円、2人の子供の塾代2万5000円、携帯代2万円、旦那のクルマのローン4万7000円、それに毎月10万円以上の医療費。
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