きっかけは先輩の無茶ぶり「新しい点字」開発の裏 20代の若き発明家「112番目のアイデア」だった

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視覚障がい者も晴眼者も読める新しい点字「Braille Neue(ブレイルノイエ)」を開発した高橋鴻介さんにお話を伺いました(筆者撮影)

「高橋。これから1日1個、発明していこう」

大手広告代理店で働くプランナー・高橋鴻介さん(28)は、新入社員時代のある日、会社の先輩からそう言われた。

新入社員は毎日、教育係の先輩に業務日誌を提出するのが会社の決まりだ。が、高橋さんの先輩は業務日誌ではなく、「発明ノート」の提出を提案。毎日1個、必ず発明のアイデアを書きとめて提出してほしいという。人によっては”無茶ぶり”ととられかねない提案だ。

しかし高橋さんは、その提案を楽しみながら実践する。仕事と関係のないアイデアを考えていると、息抜きになったのだ。最初は毎日アイデアを考えるのに苦戦していたが、100個を超えたあたりから次々とアイデアが思い浮かぶようになった。

「『これは何でこの場所にあるんだろう』とか、『何でこれはこういう形なんだろう』みたいにフィルターをかけてみると、世界は新しい発見にあふれているんです」

そして112番目のアイデアが、「新しい点字」の発明につながる。2018年、高橋さんは視覚障がい者も晴眼者(視覚に障がいのない者)も読める点字、「Braille Neue(ブレイルノイエ)」を開発した。

ブレイルノイエなら、視覚障がい者と晴眼者が同じツールを利用して情報共有できる(写真:高橋鴻介さん)

会社員でありながら「発明家」としても活動

ブレイルノイエについて説明する前に、まずは高橋鴻介さんのことを紹介しよう。彼は大手広告代理店のプランナーとして働きながら、「発明家」としても活動している。高橋さんの発明は、社会課題に紐づいたものが多い。

「自分の身近なものと、社会の接点を発見するのが好きです。例えば、自分や身近な人の困りごとから作ったものが、いろんな人の困りごとを解決して社会が良くなったらいいなと思っている。あとは自分が好奇心を持ったものが、実は社会課題につながっていたりするところも面白いんです」

2019年には、盲ろう者のコミュニケーション手段である「触手話」をもとに、「LINKAGE」というコミュニケーションゲームを発明。同年に開催されたデザインコンペ「Tokyo Midtown Award」で優秀賞を受賞した。「LINKAGE」は東急ハンズやロフトでの販売も実現し、現在は累計約1500個の販売実績を持つ。

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